NHKラジオのアプリ「らじるらじる」で、ついにクラシック番組の「聴き逃し」放送が開始されました。
このページでは、「聴き逃し」対応番組を中心に、放送で出会った素敵な録音のことを「随時更新」でつづっていきます。
アプリを使えば、放送直後から1週間後はいつでも聴けますので、興味のわくものがあったら実際に聴いてみてください。
らじるらじるアプリの使い方は、ページ下の「補足」でご紹介しています。
目次(押すとジャンプします)
私のらじお日記~随時更新中~
♫このブログでは、音源をご紹介するときに、オンライン配信されているものを中心にご紹介しています。オンライン配信でのクラシック音楽の聴き方については、「クラシック音楽をオンライン(サブスク定額制)で楽しむ~音楽好きが実際に使ってみました~」という記事にまとめています。
5/28 イギリスを代表するフルーティスト
5/28(日)~1週間
名演奏ライブラリー(公式HP)
▽イギリスの名フルート奏者ウィリアム・ベネット
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
昨年亡くなられたイギリスの名フルーティスト、ウィリアム・ベネット(William Bennett, 1936-2022)の特集。
ロンドン交響楽団、イギリス室内管弦楽団、アカデミー室内管弦楽団などの首席フルートを歴任するいっぽうで、ソリストとしても活躍した名人中の名人。
ひさびさに聴いて、すっかり魅了されたのが、冒頭で流れたモーツァルト:フルート四重奏曲 ニ長調K.285。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)
これは、ヴァイオリンの巨匠アルテュール・グリュミオー(Arthur Grumiaux, 1921-1986)との共演。
何といっても、まず、そのベネットの「音色」。
録音で聴いてもこれだけ魅了されるのですから、実演で聴いたら、一生忘れられない美しさだったでしょう。
このモーツァルトの傑作の、決定的名盤のひとつだと思います。
番組では、この録音が、実は、急病のフルート奏者の代理として参加して実現した、というエピソードが紹介されています。
これほどの名録音が、偶然の産物だったというのには驚きました。
奇蹟的な偶然に、感謝せずにいられない録音です。
5/23 インバルの名盤
5/22(月)~1週間
クラシックカフェ(公式HP)
▽チャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲」他
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
東京都交響楽団との共演でもおなじみの、イスラエル出身の名指揮者エリアフ・インバルは、フランクフルト放送交響楽団の指揮者だった時代に、数多くの有名なレコーディングをおこないました。
ブルックナーの交響曲全集、マーラーの交響曲全集などなど、名録音がたくさんありますが、逆に、ありすぎてどれを聴くべきかわからない一面もあります。
そんななかで、彼の膨大なレコーディングのなかでも出色のひとつなのが、チャイコフスキーの交響曲第4番の録音です。
チャイコフスキー: 交響曲第4番(エリアフ・インバル&フランクフルト放送交響楽団)Amazon
素晴らしい録音なのに、まだオンライン配信がないようです。
良い意味で、し尽された計算を感じるというだけでなく、それが独自の切込みの鋭さを放っていて、この曲の破格のスケール感をまったく独自の方向から描き出しています。
この放送回では、最後に流れますが、それにふさわしい、まさにメインディッシュの名演奏です。
5/21 イタリアの伝説の女性ヴァイオリニスト
5/21(日)~1週間
名演奏ライブラリー(公式HP)
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
イタリアの女性ヴァイオリニスト、ジョコンダ・デ・ヴィート(Gioconda de Vito、1907-1994)の特集。
ヴァイオリンの女王として活躍した伝説のヴァイオリニストですが、本格的に演奏活動をしたのは35歳から55歳のあいだの20年間だけで、1962年、キャリアの絶頂期に引退。
以後は、プライベートでもヴァイオリンにふれなかったという、常人には考えの及ばない活動を展開したヴァイオリニスト。
引退が早かったせいで、実際よりも、古い世代のヴァイオリニストという印象があります。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)
番組冒頭では、このブラームス:ヴァイオリン協奏曲ニ長調の第2楽章が放送されました。
共演は、パウル・ファン・ケンペン(Paul van Kempen, 1893-1955)指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団。
ただ美しいだけではない、作品のもつ深さ、神聖さをはっきりと感じさせられる、気高い名演です。
5/18 「春」の歌声
5/18(木)~1週間
クラシックカフェ(公式HP)
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
さまざまな作曲家の春めいた作品をあつめたような放送でした。
話題のピアニスト、チョ・ソンジンのヘンデルにはじまり、シューマンの交響曲第1番「春」(シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団)などをへて、番組のおわりは、往年のウィーンの歌手エーリッヒ・クンツ(Erich Kunz, 1909-1995)の歌でしめくくられました。
放送で流れたのとはちがう音源ですが、やはりクンツが歌ったウィーン・リートのアルバムがオンラインでも配信されています。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)
ジーツィンスキー (Rudolf Sieczynski 、1879-1952) の「ウィーン、我が夢の街 Wien, , du Stadt meiner Träume」。
この方は、名前の響き通り、ポーランド系のオーストリア人だそうです。
この1曲でしか名前を知らない作曲家ですが、でも、音楽史に1曲であれ作品がきざまれるというのは、たいへんなことです。
それも、こんなにノスタルジックで、夢のある作品が残ったというのは、作曲家冥利につきるのではないでしょうか。
NHK-FMがこの曲をながすときは、たいてい、クンツの歌声が選ばれている印象があります。
いろいろな音楽家のいろいろな録音を聴くたのしみも、もちろん大切ですが、いいものを何度も聴けるというのもまた、録音のありがたさ。
モーツァルトの大家だった名バリトンによる、いまも色あせない歌声です。
5/15 イングリット・ヘブラー逝く
5/15(月)~1週間
クラシックカフェ(公式HP)
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
モーツァルトに焦点をあてた放送回。
冒頭に、なつかしいイングリット・ヘブラーの演奏するが流れました。
そして、この演奏に感銘を受けた矢先、海外のサイトで彼女の訃報を伝える記事を目にしておどろきました。
おそらく、この選曲をしたクラシック・カフェの担当者の方もおどろいていらっしゃるでしょう。
私がクラシックを聴きはじめたころにはまだ来日されていて、よく教育テレビでそのリサイタルの模様が放送されていました。
クラシックを聴き始めのわたしでさえ、その端正なモーツァルト演奏にはすぐに魅了されました。
リサイタルで生の演奏を聴きたいとずっと思っていたのですが、コンサート通いを始めたころには、もうあまり来日がなく、そのままになってしまいました。
この放送で流れたのは、モーツァルト:ピアノソナタハ長調k.545(第16番)。
よくピアノの学習者が弾く、おなじみの作品です。
(放送で紹介されたあたらしい録音のものは上記AppleMusicで配信されています。この録音、ほかのサイトではうまく見つかりませんでしたが、その前の旧録音のほうは、 Apple Music ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などさまざまなサイトで聴けます)
いずれの録音も、一見心地よい演奏なのですが、耳を澄ませて聴けば聴くほど、やはり、信じられないようなことをやっているモーツァルトです。
これほど繊細で、精緻なタッチ、そして、あらゆる面での“ 抑制 ”を実現している演奏というのは、方向性こそ違えど、あのミケランジェリくらいしか思い浮かびません。
一度でいいから、実演に触れたかったピアニストです。
イングリット・ヘブラー(Ingrid Haebler、1929-2023)、享年93歳とのことです。
5/14 アーノンクールのベートーヴェン
5/14(日)~1週間
名演奏ライブラリー(公式HP)
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
オーストリア出身の指揮者ニコラウス・アーノンクール(Nikolaus Harnoncourt、1929-2016)の特集。
楽界の異端児というイメージだった彼が、後年、だんだんと王道的存在になっていったのは、とても印象的でした。
彼が変わったのか、こちらの受け止め方が変わったのか。
番組の最初に流れたベートーヴェン:「コリオラン」序曲を聴くと、自身の受けとめ方の変化を強く感じます。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)
これを初めて聴いたときは、その先鋭さばかりが私は耳についたのですが、今あらためて聴くと、楽曲に迫ろうとする真摯な姿勢のほうに強い感銘を受けます。
アーノンクール、63歳の録音だそうです。
63歳で、音楽に対するこの姿勢。
尊敬の念を感じずにいられません。
最後には、ベートーヴェンの交響曲第5番、いわゆる「運命」が流れました。
これはアーノンクールのウィーンにおける最後の演奏会のライヴ録音でもありました。
私の記憶違いでなければ、アーノンクールはこのとき、何か新しいプロット、物語のようなものを想定して、かなり具体的な筋書きをこの曲のなかに見出だして演奏したはずです。
解説書か何かに載っていたそのプロットに、私はあまり説得力を感じなかったのですが、ただ、演奏そのものには、すぐ、感服してしまいました。
近年録音されたベートーヴェンの交響曲のなかでは、もっとも傾聴している録音のひとつです。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)
アーノンクールについては、彼の最後の来日公演を聴きました。
サントリーホールでの、ハイドン:「天地創造」でした。
思っていたほどの鮮烈さがなく、聴いたその日は、少し肩透かしをくらったように感じて帰路についたのですが、翌朝、目覚めてみると、心のなかにとてもあたたかな感触が残っていて、とっても驚きました。
あれは、あのときしか味わったことのない、不思議な体験です。
アーノンクール、忘れがたい巨匠です。
5/7 メロス弦楽四重奏団の名演奏
5/7(日)~1週間
名演奏ライブラリー(公式HP)
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
ドイツの弦楽四重奏団、メロス弦楽四重奏団(Melos Quartett, 1966-2005)の特集。
この弦楽四重奏団は、昔からとくに好きな団体のひとつです。
番組冒頭では、シューベルトの未完の弦楽四重奏曲第12番D703「四重奏断章」が流れました。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)
まったく素晴らしい選曲です。
このクァルテットの美質である、構築感の確かさ、団体名でもある旋律線(メロス)のしなやかさ、そして、いかにもドイツの弦楽四重奏団らしい響きの充実などが、この約9分間のなかに凝縮されているように思います。
第1楽章だけが完成されて、第2楽章は数小節で投げ出されてしまった未完成作品ですが、シューベルトがとくに未完成作品を大量に残した時期の作品のひとつです。
ただ、この作品のあとには、あの「ロザムンデ」や「死と乙女」などの傑作が相次いで生まれてくるので、このジャンルにおける傑作の先駆け、あるいは「前触れ」となった重要な作品。
この記念碑的な傑作を、心から味わえる名演奏です。
5/7 札幌交響楽団の東京公演
5/7(日)~1週間
ブラボー♪オーケストラ
札幌交響楽団 東京公演から(番組HP)
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
2023年2月にサントリーホールでおこなわれた、札幌交響楽団の東京公演。
指揮は首席指揮者のマティアス・バーメルトで、曲目はシューベルトの交響曲第8番ハ長調「ザ・グレイト」。
これが、意外なほどに、と言ったら失礼かもしれませんが、最近なかなか聴けないような堂々たる演奏で聴き入りました。
第1楽章の充実した構成、第2楽章のトリオで聴かれる味わい深いデクレッシェンドなど、驚くほど正攻法の、素晴らしいシューベルトになっていました。
先の3つの楽章とのバランスを考えたときに、フィナーレがやや引きずるようなテンポに聴こえたのですが、会場ではどう響いたのでしょう。
いずれにせよ、これは会場で聴いてみたかったと思わされる演奏。
プログラミングを見ただけでも、その充実ぶりが感じられるコンビだけに、今後もいっそう注目していこうと思います。
The Waltz 夢幻∞ワルツ/マティアス・バーメルト 指揮 札幌交響楽団(Amazon)
5/2 シューマン特集
5/2(火)~1週間
クラシックカフェ(公式HP)
シューマン:「子どもの情景」など
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
シューマン作品を特集の放送回。
いちばん最後の「ピアノ五重奏曲」が聴きたくて耳を傾けたのですが、実際に心奪われたのは、マルタ・アルゲリッチのピアノ演奏による「子どもの情景」と、クルト・マズア(1927-2015)指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団による「交響曲第4番」でした。
東ドイツの名指揮者マズアによる交響曲第4番は、屈託のない、とっても素直な演奏。
ひさびさに聴いて、どうしてこの曲の特集ページで推薦しなかったのか後悔したのですが、そうではなくて、載せようとしたもののオンライン配信が見つからなくて、あきらめたんでした。
間違いなく「定番」といっていいくらい有名な録音ですが、まだ配信されていないようです。
もうひとつの素晴らしいシューマン、アルゲリッチのピアノによる「子どもの情景」は配信されています。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)
昨年、実演で聴いたアルゲリッチの精妙なタッチをはっきりと思い出させてくれる、美しい演奏です。
5/1 エルガーの「作品1」
5/1(月)~1週間
クラシックカフェ(公式HP)
コダーイの組曲「ハーリ・ヤーノシュ」など
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
私はこのブログの最初の投稿をエルガーの作品ではじめたくらい、エルガーという作曲家に特別な愛情を感じていますが、まだまだ理解のできていない作品や、いまひとつ、ピンとこない作品というものがあります。
そのひとつが、『青春の杖(子供の魔法の杖)』The Wand of Youth という組曲です。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)
サー・エドワード・エルガー(1857-1934)が1907~08年頃に書きあげた作品なので、もうすでにいくつも作品を生みだした後なのですが、わざわざ「作品1」という番号があたえられています。
というのも、これはエルガーが少年時代に書き留めていた劇音楽などのスケッチをもとに作曲したものだからです。
いわば、自身の「原点」をあつめた小品集ということになります。
短い作品が多く、聴きやすいのは聴きやすいのに、いまひとつピンとこない印象があった作品集でしたが、今回、初めてサー・ネヴィル・マリナー(Sir Neville Marriner,1924-2016)の指揮した録音で聴いて、急にすっと心に届いてきました。
これは、とっても良い演奏だと思います。
1曲、1曲の描き分けが丹念になされていて、エルガー特有のノスタルジックな響きも非常に印象的です。
折に触れて聴きなおして、この曲に親しんでいきたい、素敵な演奏です。
補足1:「らじるらじる」のアプリについて
アプリのダウンロードについては、公式ホームページのアプリダウンロードのページにくわしく載っていますが、ほかのアプリと同様、Apple StoreやGoogle Playからダウンロードすればいいだけです。
無料のアプリなので、通常かかる通信費など以外に特別な費用はかかりません。
また、PCの場合は、こちらのメインページから直接ストリーミングで聴くことができます。
補足2:現在おすすめの聴き逃し対応クラシック番組一覧
各公式ホームページには、これからの放送予定と、聴き逃しについての情報が掲載されています。
★特におすすめの3つの番組
クラシック・カフェ(番組公式HP)‥さまざまなクラシック音楽を丁寧な解説付きでたのしめる一押しの番組。
名演奏ライブラリー(番組公式HP)‥作曲家というより、演奏家に焦点をあてた番組で、満津岡信育さんのわかりやすい解説でお薦めの番組。
ベスト・オブ・クラシック(番組公式HP)‥国内外のコンサートのライブ録音を解説付きで紹介してくれる、新鮮度抜群のクラシック番組。
☆そのほかのお薦め番組
N響演奏会(番組公式HP)‥NHK交響楽団の演奏会を生放送する特別枠の番組。
ビバ!合唱(番組公式HP)‥広く合唱をあつかう番組で、他ジャンルがメインの日もありますが、クラシック音楽もおおく扱われます。
吹奏楽のひびき(番組公式HP)‥日本は吹奏楽王国。吹奏楽に親しんだ経験のある方は必聴の番組。
現代の音楽(番組公式HP)‥作曲家の西村朗さんの絶妙な解説がすばらしい、現代音楽をあつかう番組。
ブラボー!オーケストラ(番組公式HP)‥国内のオーケストラのライブ録音を放送する番組。演奏会の予習・復習に最適の番組。
ここにご紹介したほかにも、NHKのラジオではクラシック番組がいろいろと放送されていて、「NHK-FMの歩き方、クラシック音楽をラジオでたのしもう♪~ラジオの聴き方とお薦め番組」という記事でもご紹介しています。