4年ぶりに、クラシック音楽の大型イベント、ラ・フォル・ジュルネTOKYO(公式ホームページ)が有楽町の国際フォーラムを中心会場に開催されます。
5月のゴールデンウィーク(5/4~6)に、朝から夜まで、クラシックのコンサートが代わる代わる行われる音楽祭です。
ただ、例年よりは、いくぶん規模を縮小して開催するようです。
今回のテーマは「Beethoven ― ベートーヴェン」。
この大型イベントの楽しみ方、そして、前々から気になっている点などをまとめてみました。
Contents
どんなイベントなのか簡単にご紹介
ラ・フォル・ジュルネは「熱狂の日」というフランス語で、フランス人のプロデューサー、ルネ・マルタン氏が開催するクラシック音楽のイベントです。
おおきな特徴は、
①1つのコンサートがおおよそ45分~という短さ
②チケットの最低価格が¥1500という手ごろな価格に設定されている
という点です。
クラシックを、より気軽に、より広い層に楽しんでもらおうというスタンスのイベントです。
メイン会場は、有楽町にある「東京国際フォーラム」で、2023年は5月4日~6日の3日間、朝から夜までさまざまなコンサートが行われます。
このイベントの良い点、気になる点
ここからは、このコンサートについて、お薦めできる点と気になる点をご紹介します。
結論を箇条書きにすると、良い点は①ひとつひとつのコンサートが短い②チケット代が安めに設定されている③一流のアーティストも参加している④工夫が凝らされている、という4つ。
気になる点は、そもそも会場がクラシック音楽に不向きな会場に設定されている、という点です。
メリット①コンサートが短い
初心者であるほど、クラシック音楽の難点として、「長さ」を挙げる方は多いはずです。
コンサートも、休憩を含めて2時間前後が普通です。
その点、ラフォルジュルネは、どのコンサートも基本的に45分~60分になっているので、「長いのが苦手」という方でも、気楽に足を運ぶことができると思います。
メリット②チケットが安い
クラシックを聴いてみようとしたときに、チケットの値段もまた、ハードルになるかもしれません。
この音楽祭では、安い席は1500円から設定されているので、「ちょっと試しに聴いてみよう」という、気軽な気持ちで手を出しやすい価格設定になっていると思います。
ただ、実は、クラシックのコンサートがすべて高いわけではなくて、例えば、関東では、3千円出せば、ジョナサン・ノット指揮する東京交響楽団のような最上級のコンサートを聴くことができたりします。
チケットの値段が気になっている方は、この音楽祭にこだわらず、ブログの「コンサートに行こう!お薦め演奏会」のページでほかのコンサートもチェックしてみてください。
メリット③一流のアーティストが参加している
過去には、宗教音楽の大家ミシェル・コルボ(Michel Corboz, 1934-2021)が参加していたりと、よく見ると、マニアもうなるような一流のアーティストも参加していたりするのが、このイベントがの凄いところ。
今年、2023年のラフォルジュルネは名ピアニストの参加が目立っていて、アンヌ・ケフェレック、アブデル・ラーマン・エル=バシャ、ジャン=フレデリック・ヌーブルジェ、広瀬悦子さんらの公演は注目だと思います。
メリット④工夫が凝らされている
ありきたりのクラシック・コンサートからの脱却、というのもひとつの姿勢なのでしょう。
特に小さなホールでの、工夫を凝らしたプログラミングがおおきな特徴のひとつです。
通常はオーケストラで演奏される交響曲などを、室内楽の編曲版やピアノ連弾版でやってみたりと、なかなか通常では独立して集客をするのが難しいプログラムにあえて挑戦している面があって、とても好感が持てます。
そうした点は、むしろ、初心者というよりクラシック・ファンにこそ、強く訴えかけるところかもしれません。
デメリット:会場が疑問
「クラシック音楽を広めたい」という姿勢には心打たれるのですが、会場に「東京国際フォーラム」という、クラシックにまったく向いていない会場が選ばれたときにはとても驚き、がっかりしました。
おそらく、経営上の、収支の都合なのでしょう。
わたしのブログの「コンサートに行こう!お薦め演奏会」のページをご覧いただくと一目瞭然なのですが、クラシックでこのホールを演奏会場にすることはまずありません。
ホールAは5000席規模で広すぎて、オーケストラを聴いても、かなり遠くの音を聴いている感覚になります。
クラシックのコンサートで通常使用される「大ホール」は、サントリーホールであれ、東京芸術劇場であれ、東京文化会館であれ、いずれも2000席規模です。
「広すぎて響きが悪い」とクラシック・ファンから敬遠されるNHKホールですら3500席規模ですので、東京国際フォーラムはまったく広すぎるホールだとわかると思います。
広すぎると、大オーケストラを聴いてもまず迫力がありませんし、逆に繊細な音はこちらに伝わってくる前の段階でやせてしまいます。
5000人規模のホールというのは、マイクを使って音楽を届けるポップス向けの会場です。
いっぽうで、ホールCは1500席規模、また、ホールDは150席前後と室内楽向けのサイズですがなので、広さとしてはそれぞれ悪くないのですが、やはりクラシック音楽用に作られているわけではないので、単純に音響がよくありません。
「クラシックに向かないホールを会場にしている」という点が、このイベントの唯一にして、最大の欠点だと思っています。
クラシックも楽しめる「イベント」として活用するべき
純粋にクラシック音楽を楽しもうとすると難点のある音楽祭ですが、クラシック音楽に触れられる「イベント」として活用すると、ゴールデンウィークを彩る、たのしい機会になると思います。
ここからは、このラ・フォル・ジュルネをどう楽しむかについての提案です。
楽しみ方①小さなホールの公演を聴くべし
大きすぎるホールAの公演は避けて、ホールCやホールDの公演から選びましょう。
ホールAで行われる「オーケストラ公演」は、わざわざこんなに大きすぎるホールで聴く必要はありません。
むしろ、プログラムに工夫が凝らされた、小さなホールの公演をお薦めします。
きっと同じように感じる方が少なくないのか、ホールA以外の公演は、あっという間に売り切れます。
ラ・フォル・ジュルネでは「先行予約」のようなものがよく行われますので、そちらを活用するなど、先手必勝でチケットを手に入れてください。
楽しみ方②欲張らない
1つのコンサートが1500円~という値段で聴けるため、3つも4つも聴きたくなるかもしれませんが、仮に3つコンサートを聴いたとすると、最低でも1500円×3=4500円。
短いコンサートを選んだとしても45分×3=135分です。
つまり、おおよそ2時間ちょっとで5千円弱というと、これはもう、普通のクラシック・コンサートと変わらないコストパフォーマンスになってしまいます。
なので、お薦めの楽しみ方として、まずは「欲張らない」ことです。
コンサートの数は「1つか2つ」くらいにしぼって楽しむことをお薦めします。
楽しみ方③無料のパフォーマンスを楽しむべし
会場では、有料コンサートのほかに、プロ・アマチュア問わず、さまざまなアーティストによる無料のパフォーマンスが行われます。
私が数年前に行ったときには、室内楽のコンサートを1つ聴いて、ただ、そちらの記憶はもう全くないのですが、野外でフィドル(民俗音楽のヴァイオリン)のバンドがやっていたパフォーマンスのことは強烈に覚えています。
とっても鮮烈なハチャトゥリアンの音楽を演奏していて、あれは圧巻でした。
そうした無料の音楽のパフォーマンスがとっても充実しているのが、このイベントの良いところ。
2023年の無料公演がどれほどの規模で開催されるのかはまだわかりませんが、例年通りであれば、一日中、会場のどこかで行われるであろう「無料の音楽パフォーマンス」を、有料コンサートとあわせて楽しむことをお薦めします。
楽しみ方④食べもの
音楽を離れますが、例年通りであれば、キッチンカーなども多数出店して、世界中のさまざまな食べ物をたのしむことができるのも、このラ・フォル・ジュルネの魅力のひとつです。
会場では、音楽だけでなく、「食」も楽しみましょう。
こうして、あくまで「イベント」として楽しむ、というスタンスが大切です。
まとめ
「クラシック音楽に触れられるイベント」として、ラ・フォル・ジュルネを活用しましょう。
ひとりでじっくりと音楽を聴くための機会というよりは、「家族連れや仲間内で、わいわいと出かけていくようなお祭り」として捉えるといいのではないかと思います。
①小さめのホールの公演を1つ(2つ)選んで、②早めにチケットをおさえる。当日は、③会場でおこなわれる無料のパフォーマンスも色々聴いて、さらには、④世界の色々な「食」をたのしむ、というスタンスがいいと思います。
2023年のラ・フォル・ジュルネTOKYO(公式ホームページ)は2/21の午後になってようやくプログラムが発表されましたが、先行予約は翌2/22から、もうスタートということになっています。
ここらへんは、やはり商売上手です。
このイベントを楽しもうという方は先手必勝で、早め早めに動いて、良い公演のチケットをおさえてみてください!