シリーズ〈オーケストラ入門〉

ウィーン・フィル・ニューイヤー・コンサートの指揮者たち~小さな試聴室

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シリーズ《オーケストラ入門》、今回はウィーン・フィルのニューイヤーコンサートに登場した名指揮者たちの特集。

歴史をつくった4人の名指揮者たち

 

ニューイヤーコンサートの指揮者たち

 

名門ウィーン・フィルがおこなう、元旦恒例のニューイヤー・コンサートには、毎年ちがった指揮者が呼ばれます

その時代の代表的な指揮者、そして、ウィーン・フィルと関係のふかい指揮者がえらばれます。

 

ですが、じつは、最初からそういうリレー形式だったわけではありません。

 

1939-1954年:
クレメンス・クラウス

 

クレメンス・クラウス(Clemens Krauss, 1893-1954)というオーストリアの大指揮者が、1939年の大晦日にウィーンフィルと始めたコンサート・シリーズがニューイヤーコンサートの始まりとされています。

クラウスは、亡くなる1954年まで、戦争による中断をはさみながらも、ニューイヤー・コンサートの指揮台にあがり続けました(1946&47年はヨゼフ・クリップスが指揮)。

 

♪1951-1954年のニューイヤーコンサート(クレメンス・クラウス指揮ウィーン・フィル)

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第1回ニューイヤー・コンサートの録音

 

大晦日に行われていたコンサートが、年明けの元旦に移ったのが1941年1月1日。

まさにその、第1回のニューイヤー・コンサートのライヴとされる録音が残っています(!)。

 

♪1941年、クレメンス・クラウス指揮ウィーン・フィルによる第1回ニューイヤー・コンサート

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戦時中とは思えないくらい、聴きやすい録音です。

往年のウィーン・フィルの芳醇な音を伝える貴重なドキュメント。

各楽器のソロに聴かれる「ウィーンなまり」も感動的です。

 

1955~1979年:
ウィリー・ボスコフスキー

 

クラウスのあと、1955~79年は、このオーケストラのコンサートマスターであり指揮もできたウィリー・ボスコフスキー(Willi Boskovsky,1909-1991)が、その役目を引き継ぎました。

ヴァイオリンを片手に指揮台に立つスタイルは、作曲者ヨハン・シュトラウスの演奏スタイルを彷彿とさせ、一時代を築きました。

 

♪1979年のニューイヤーコンサート(ボスコフスキー指揮ウィーン・フィル)

ボスコフスキー最後の登場回。

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1980~1986年:
ロリン・マゼール

 

ボスコフスキーが退いたあと、1980~1986年は、当時ウィーン・フィルと関係の深かった名指揮者ロリン・マゼール(Lorin Maazel, 1930-2014)が振っていました。

マゼールは、この期間のあとも、ニューイヤー・コンサートにたびたび出演することになります。

 

♪1980-1983年のニューイヤーコンサート(マゼール指揮ウィーン・フィル)

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1987年:
ヘルベルト・フォン・カラヤン

 

ひとりの指揮者が何年も降りつづけるスタイルが、リレー形式へと変わったのが1987年。

当時、楽壇の“帝王”と言われていたヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan, 1908-1989)が自ら希望して、ニューイヤー・コンサートに登場したのがきっかけと言われています。

 

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カラヤンの登場により、ややローカルな音楽イベントだったニューイヤー・コンサートの位置づけは一変。

ニューイヤーコンサートの指揮台は、まったく特別な舞台、世界中の視線が注がれる場所へと変わりました。

 

カラヤン登場以降、その時代を代表するような名指揮者たちが、代わる代わる指揮台へあがる現在のスタイルとなります。

 

ニューイヤー・コンサートの歴代の指揮者たち

 

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1988 & 1991:
クラウディオ・アバド

 

イタリア人指揮者クラウディオ・アッバード( Claudio Abbado, 1933-2014)は2回だけ、ニューイヤー・コンサートの指揮台に立ちました。

 

♪初登場、1988年。

1987年のカラヤン登場につづく登場でした。

名門ベルリン・フィルの音楽監督が、1989年にこの世を去るカラヤンからアッバードへと引き継がれたことを考えると、このリレーはとても象徴的。

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♪2度目にして最後の登場となった1991年。

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アッバードが指揮したときのライブ録音は、なにか権利上の理由があるのか、オンラインでは独立した配信がなく、オムニバス盤に数曲収録されているだけです。

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1989 & 1992:
カルロス・クライバー

 

あまりに完璧主義者であるがゆえに、「1年に1回指揮台に立つかどうか」というくらい孤高の存在だったカルロス・クライバー(Carlos Kleiber、1930-2004)は2回登場しました。

 

♪初登場が1989年。

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♪2度目の登場が1992年でした。

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1990, 1995, 1998, 2007 & 2015:
ズービン・メータ

 

インド出身、アジア人として最初にニューイヤー・コンサートに登場したズービン・メータは、ウィーンで学んだこともあり、シュトラウス作品が得意。

現在までに、5回も登場しています。

 

♪初登場は1990年。

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♪2度目は1995年。

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♪3度目の1998年。

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♪4度目が2007年。

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♪最新の登場は2015年、5度目の登場。

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1993, 1997, 2000, 2004, 2018, 2021 & 2025(予定):
リッカルド・ムーティ

 

ウィーン・フィルと深い関係を築いているイタリア人指揮者、リッカルド・ムーティは、現在までに6回登場。

うれしいことに、2025年には、7度目の登場が予告されました!

 

♪初登場は1993年。

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素晴らしい登場回でしたが、まだオンライン配信がありません。

 

♪2度目が1997年。

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こちらも素晴らしい回でしたが、まだオンライン配信がありません。

 

♪3度目が2000年、ミレニアムの年。

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♪4度目が2004年。

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♪5回目は2018年、14年ぶりの登場。

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♪6回目は2021年。

コロナ禍でロックダウン中のウィーンにおいて、無観客でおこなわれました。

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1994, 1996, 1999 & 2005:
ロリン・マゼール(指揮)

 

ボスコフスキー時代のあとに、ずっと指揮を担当していたロリン・マゼール(Lorin Maazel, 1930-2014)は、なんと合計11回も出演。

 

♪久々の登場となった1994年。出色の回。

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♪1996年。これも素晴らしかった回。

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♪1999年登場回。

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♪2005年、最後の登場。

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2001 & 2003:
ニコラウス・アーノンクール(指揮)

 

近年、もっとも意外性で話題をよんだのが、異端児ニコラウス・アーノンクール(Nikolaus Harnoncourt、1929-2016)の登場。

♪2001年、衝撃の初登場。

冒頭から「ラデツキー行進曲」を原典版で演奏。

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♪2003年、2回目にして最後の登場。

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♪アーノンクールは、シュトラウス作品に熱心で、ベルリン・フィルともアルバムを制作しているほどです。

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2002:
小澤征爾

 

日本において、珍しくクラシック音楽のCDがオリコンチャートにランクインした、小澤征爾さんの登場回。

小澤征爾さんは、2002年シーズンから、ウィーン・フィルの母体であるウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任しました。

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2006, 2012 & 2016:
マリス・ヤンソンス

 

ラトビア出身、オスロ・フィルを世界的な名門に成長させたマリス・ヤンソンス(Mariss Jansons, 1943-2019)は3回登場。

 

♪2006年、初登場。

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♪2012年、2度目の登場。

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♪2016年、最後の登場回。

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2008 & 2010:
ジョルジュ・プレートル

 

ユニークな指揮ぶりのフランスの巨匠ジョルジュ・プレートル(Georges Prêtre, 1924 – 2017)は、晩年になってから2回登場しました。

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♪2010年、2度目にして最後の登場。

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2009, 2014 & 2022:
ダニエル・バレンボイム

 

アルゼンチン出身、ピアニストとしても名高いダニエル・バレンボイムは、現在までに3回登場。

 

♪初登場は2009年。

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♪2014年、2度目の登場。

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♪最新は2022年、3度目の登場。

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2011, 2013 & 2023:
フランツ・ウェルザー=メスト

 

ウィーン国立歌劇場の音楽監督もつとめたフランツ・ウェルザー=メストは現在までに3回登場。

 

♪初登場は2011年。

 

♪2013年、2度目の登場。

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♪最新は2023年、3度目の登場。

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2017:
グスターボ・ドゥダメル

 

ベネズエラ出身のグスターボ・ドゥダメルは1回登場。

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2019 & 2024:
クリスティアン・ティーレマン

 

ウィーン・フィルと、ベートーヴェンやブルックナーの交響曲全集を完成させたりと、近年、関係がより深まっているクリスティアン・ティーレマンは2024年、2回目の登場となります。

 

♪初登場は2019年。

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♪2024年、2回目の登場。

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2020:
アンドリス・ネルソンス

 

ラトビア出身のアンドリス・ネルソンスは1回登場。

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2025年はリッカルド・ムーティが登場

 

2025年はリッカルド・ムーティの登場が発表されました

 

2025年はイタリアの巨匠リッカルド・ムーティの登場が予告されました。

素直に、とってもうれしいニュースです。

 

2024年、元旦から日本は災害にみまわれ、お正月どころではありませんが、来年のお正月は、より多くのひとがゆっくりとムーティのシュトラウスを味わえているよう祈りたい気持ちです。

 

 

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判断基準はあくまで主観。これまでに実際に聴いた体験などを参考に選んでいます。

 

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