シリーズ〈交響曲100の物語〉

【初心者向け:交響曲100の物語】ウェーバー:交響曲第1番ハ長調~小さな試聴室

 

シリーズ《交響曲の名曲100》、その第22回はちょっと知名度の低い音楽です。

前回まで連続してベートーヴェンを取り上げましたが、彼が傑作の交響曲を次々に書きだしているあいだ、ほかの作曲家たちもそれぞれに交響曲を書いていました。

そんななかから、今回はドイツの作曲家ウェーバーが書いた、交響曲第1番ハ長調をテーマにお届けします。

20歳の若書き

歌劇『魔弾の射手』でドイツ・ロマン主義オペラの幕開けを飾ることになる、カール・マリア・フォン・ウェーバー。

彼は『魔弾の射手』や『オベロン』などのオペラやその序曲、そして、ベルリオーズがオーケストラ用に編曲したピアノ曲『舞踏への勧誘』などの作品で圧倒的に有名になる作曲家ですが、若いころに2曲だけ「交響曲」を書きました。

 

それは、ちょうどベートーヴェンが交響曲第4番を書き上げたころの、1806年からその翌年にかけてのことで、ウェーバーはまだ当時20歳でした。

彼はこのとき、自身の楽団のために2曲の「交響曲」を書いていて、そして、結果的にはこの2曲が最初で最後の交響曲群となりました。

というのも、第2番を書き上げて間もなく、ナポレオン軍がやってきて社会情勢が悪化。
指揮者を務めていた楽団がすぐに解散になってしまったため、交響曲を書くきっかけや発表する機会が失われてしまったわけです。

 

 

交響曲第1番

交響曲第1番ハ長調は、あのモーツァルトの交響曲第31番『パリ』をお手本にして書いたとされていて、実際、第1楽章など開始からして似ています。

全4楽章で25分ほどの音楽ですが、音楽の重心はフィナーレより第1楽章にあって、そういう意味では、ベートーヴェンと同時代の音楽ではあるものの、ハイドンやモーツァルトに近似している音楽です。

というより、それがむしろ普通であって、ベートーヴェンがどれほど進歩的な作風だったのかということの証明でもあります。

 

ウェーバー本人は第1&4楽章の出来にかなり不満だったことが手紙などからわかっていて、いずれ書き直すということでしたが、結局、それは果たされませんでした。

そして、この時代ではめずらしくクラリネットが編成に入っていません。
おそらく、当時務めていた楽団にクラリネット奏者がいなかったなどの、実務的な理由だと思います。

第1番のあとに書かれた第2番のほうもやはりハ長調で、こちらは当時仕えていた公爵の趣味もあって、ハイドンの交響曲を意識して作曲されました。

🔰初めてのウェーバー:交響曲第1番

この曲は、現在でも、あまり演奏されない曲です。

ただ、私は以前、イギリスの名指揮者コリン・デイヴィスがドイツのバイエルン放送交響楽団とこの曲をとりあげたライブ録音をNHK-FMで聴いて、それでこの曲と出会いました。
それがとっても素敵な演奏で、いつの間にか気づくと口ずさんでしまうほどでした。

ウェーバー本人はあまり満足していなかった曲のようですが、その数々の主題の親しみやすさは大きな魅力だと思います。

 

作曲者本人の見解と真逆になってしまうんですが、私は両端楽章が好きです。

ウェーバー本人が「支離滅裂な序曲のよう」と言った第1楽章は、まさにその言葉のとおりで花火が打ち上がるような唐突さと華やかさがあって楽しいですし、フィナーレにはとってもチャーミングな瞬間があります。

なので、私がむしろ最初に聴いてみてほしいと思うのは、「支離滅裂」と作曲者が恥じた第1楽章。
とっても面白い音楽になっています。

あるいは、作曲者の意見と私の感想が一致する、第3楽章スケルツォ。
この楽章から聴いてみるのもお薦めできます。

 

この曲を聴くといつも思うんですが、ビゼーの交響曲ハ長調がどこか似ているように思えてなりません。
いつかビゼーを取り上げるときに考えてみたいところです。

 

私のお気に入り

わたしがこの曲を好きになるきっかけになったコリン・デイヴィス指揮の録音というのは、どうもCDなどになっていないようです。
たまたまコンサートで取り上げただけだったのかもしれませんが、いつかあのライヴ録音が発売されるようなことがあれば、ここでも追加でご紹介します。

 

ホルスト・シュタイン指揮ウィーン・フィル
ホルスト・シュタイン(1928-2008)はドイツの名指揮者。
日本のNHK交響楽団の名誉指揮者だったので、日本のクラシック・ファンにはとくに馴染み深い方でした。

彼がドイツのバンベルク交響楽団を率いて来日したときに、そのブラームスを実演で聴きましたが、オーケストラから渋みのある響きをじっと引き出していた、誠実な指揮ぶりが思い出されます。

このウェーバーでは、名門ウィーン・フィルを指揮して、ゆたかな歌と音楽のもつ躍動感が大切に演奏されています。
( Apple Music↓ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)

 

カール・エッティ指揮ウィーン放送交響楽団
オンライン配信で見かけて、何気なく聴いてみたらとっても良かった演奏。
素朴な味わいで、のびやかさと同時にどこか鄙びた表情があって、落ち着いて楽しめます。

カール・エッティという指揮者については、寡聞にしてまったく未知の指揮者で、経歴も何も存じ上げないんですが、この演奏を聴く限りでは、堅実で実直な、ゆたかな息づかいの音楽をされている方です。
一口で言って、間違いなく「良い音楽家」です。
( Apple Music ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)

 

オランダ室内管弦楽団
YouTubeでよく動画を見かける団体ですが、考えてみたら、あのベルリン・フィルの伝説的コンサート・マスター、シモン・ゴールドベルクがむかし率いていた団体です。
ゴールドベルク氏については、以前、アイネクライネナハトムジークのところで少しご紹介しています。

この動画では、ゴルダン・ニコリッチ氏をコンサートマスターに、モダンな照明のもと、颯爽とした演奏が展開されています。
この普段あまり演奏されない音楽を、こうして良い演奏動画で、公式にあげてもらえるのは本当にありがたいです。

 

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