何であっても、初めてというのはいろいろわからないことだらけです。
ここでは「コンサート当日の不安を解消!」と題してお送りします。
具体的にどのコンサートに行ったらいいのかお悩みの方は、お薦めのコンサートについては『コンサートに行こう!お薦めの演奏会』のページから移動をおねがいします。
チケットをどこでどう買ったらいいのかがわからない場合は、「コンサートの選び方&チケットの買い方【初めてのクラシック・コンサート】」というページをご覧ください。
目次(押すとジャンプします)
コンサート当日の持ち物
・チケットを忘れない(コレは絶対!)‥
これはゼッタイです。
チケットを忘れても事情を説明して入れてくれるホールは激レアです。
・のど飴を忘れない(咳き込み対策)‥
冬場のコンサート会場など、特に乾燥の厳しい季節はふとした瞬間にせき込みがち。
最近はマスクをしているので多少ちがうとは思いますが、のどを潤すためにのど飴はあると安心です。
ただし、なるべく「包みを開けるときに音がしない」飴を選びましょう。
音が出ない包みのものを持ち歩けば、万が一、演奏中にせき込んでもその場ですぐに飴を安心して取り出せます。
・お茶や水などの飲料水(ペットボトル、水筒など)‥
以前はホール施設内に水飲み場があったりしたのですが、今はコロナ対策で使えないところが多いです。
ですので、飲料水は自分で持ちこむのが安心です。
ホール内ホワイエなどで軽食コーナーがあるホールもありますが、それもコロナ禍で営業が不安定です。
コンサート当日の服装
・気をつけるのはただ1点、「音の出にくい服装」を心がけることです。
コンサートなのでとにかく「音」に気をつけなければいけません。
シャカシャカ音が出てしまうような服を着ていくと、ホールは意外と客席の音も拾うので、変に響きます。
演奏中は周囲の人の迷惑になりますし、それが気になって自分も身動きできなくなったりします。
・「音」という点では、アクセサリーも注意です。
イヤリングなどで、自分が動くたびに音がカチカチ出てしまうアクセサリーは避けましょう。
・「高い席を買ったら、それに見合う服装を」といった話をたまに見かけますが、S席を買ったとしてもユニクロ・GU・しまむらなどでまったく問題ありません。
そもそも、隣の人がどんな価格帯の服装かなんて、誰も気にしていません。
もし高い席は高い服を着ろというなら、ほとんどの大作曲家はホールの一番奥で聴かなければなりません。
普段着で何も問題ありません。
・ただし、ドレスコードがある演奏会はそのルールに従いましょう。
「正装コンサート」や「着物コンサート」などの企画演奏会のときには、当然、それに合った服装で行かなければいけませんが、特にそうした記述がないコンサートは何を着ていっても大丈夫です。
・「学生なんですが、制服で平気ですか?」という質問もよくありますが、制服で大丈夫です。
実際、コンサート会場にはよく制服の子がいますし、学ランで来ている子もよく見かけます。
何も問題ありません。
・冬場のコートなど、あるいはバッグ類の荷物など、座席に持ち込むとかさばるときは、クロークを利用しましょう。
たいていのホールには荷物を預かってくれるクロークがあります。
ほとんどのホールが無料で、ただ荷物を預けて、預かり証を受け取るだけです。
コンサートの帰りに、忘れずに荷物の受け取りをしましょう。
もし忘れてしまった場合はホールにすぐ連絡を。
※クロークは現在、感染症対策でサービスを停止しているホールが多いです。
ホールの場所を事前に確認しましょう
・ホールの場所は事前にネットなどで必ず確認しておきましょう。
似たような名前のホールが複数あったりもするので、初めての場合は気をつけて検索しましょう。
最寄り駅からの移動についても、周辺地図を見ておくなど、場所をしっかりと特定しておきましょう。
たとえば、サントリーホールのHPを例にとると、「アクセス・バリアフリー」というところを見ると、交通手段に応じて、ホールへの地図が載っていたりします。
・ホールまでは電車を利用する確率が高いと思いますが、電車は遅延がつきものです。
駅からの移動時間などもあるので、余裕をもって計画しましょう。
寝てしまいそう…
・電車の中で眠っているのは日本人くらいとよく言われますが、疲れきってコンサートホールに行けば、当然、眠くなります。
必ず、十分な睡眠をとってコンサートホールへ向かいましょう。
特に「いびき」はホールで響きわたりますので、これだけは絶対に避けましょう。
・十分に睡眠をとって行ったのに眠くなる演奏というのもあります。
それは演奏家のほうに責任があります。
このコンサートはハズレだったかなぁということになります。
予習は必要?
・「私たちは周到に準備をかさねて、本番にのぞんでいるのです。聴衆にもそれなりの準備をしてきてもらいたいのです」。
これはずいぶん前ですが、イタリアの名指揮者リッカルド・ムーティの発言です。
オペラの公演のときに字幕を出すか出さないかで議論になったときの発言で、以前の彼はオペラ上演のときに字幕を出すことに猛反対していました。
ストーリーくらい頭に入れてから来てくれというのが彼の主張でした。
・予習はしてもしなくてもいいですが、予習をすることで得られる楽しみもあります。
音楽というのは、一度聴いてその魅力がすぐわかるものもあれば、何度も聴かないとわからない曲もあります。
後者の場合は、事前に予習をしておくと、いっそうコンサートが楽しめます。
それに単純な話、耳になじんだものの方が興味を失いにくいということもあります。
また、いろいろな演奏で事前に聴いておくとで、聴きに行ったコンサートでの指揮者とオーケストラがやろうとしていることが、予習で聴いた他の演奏との比較でよくわかるという面白さもあります。
・予習をあえてしないという楽しみ方もあります。
それはつまり、世界初演を聴くつもりで作品と出会うたのしみです。
みんなが知っているベートーヴェンの『運命』でさえ、この世界で初めて響いた瞬間というのはあったわけです。
私はかなりの曲をすでに知ってしまいましたが、あえて数曲、この楽しみのためにCDも聴かないで取っておいてある曲があります。
題名は知っているけれど、いつかコンサート会場で、生演奏で初めて聴いて知るという体験、自分にとっての世界初演を体験するためです。
コンサート当日の飲食
・ホール内での飲食は厳禁です。
クラシックのホールで、ホール内飲食がOKのところは一度も見たことがありません。
ホールの外には長椅子があったり飲食ラウンジがあったりしますので、そこでは飲食可能です。
ただ、これも今はコロナ対策で以前ほど自由ではないです。
それに初めてのコンサートで、ベンチにすわってサンドイッチを広げるというのもなかなか勇気がいると思います。
「食事はホールの外で済ます」というふうに考えておく方が安心でしょう。
ペットボトルなどを持っていって、ホールの外で水分だけ補給すればいいかと思います。
・というわけで、食事はコンサート前かコンサート後に外で済ませるのが安心です。
たいていのホールの近くには飲食店があります。
また、場所によってはコンサートチケットの半券で割引をしてくれるなど、ホールと提携しているお店もあったりします。
これは、事前にネットなどで情報を調べておきましょう。
・特に夜のコンサートのはじまる時間と飲食店の混む時間帯はぶつかることが多いです。
コンサート前に食事をする場合は、時間に余裕を持って食事を済ませておきたいです。
意外と大変、コンサート当日のトイレ事情
・これが大変です。
男性用トイレもそうですが、特に女性用トイレは基本、行列ができます。
というのも、休憩時間15~20分のあいだに、ホールにいるお客さんの多くが一斉にトイレへ行くためです。
これは避けようがありません。
並ぶことを前提に早めに動きましょう。
・特に冬場ですが、コンサート前でもトイレが混んだりします。コンサート前のトイレに関しては多少、工夫の余地があります。
①まずは基本、時間に余裕を持って会場に入っておく。
②ホールが何かの複合施設のなかにある場合は、同じ施設内でホールとは別の場所にトイレがあることも多いです。
ホールへ入る前にそちらへ行っておくのも良いです。
③駅から直行できるホールの場合は、駅のトイレを使用してからホールへ向かうのも良いです。
・ホールの係の人が「下の階のトイレのほうが空いています」などの誘導をしてくれるホールもあります。
よく係の人の話を聞きましょう。
(追記)
・男性用トイレの行列も最近、目立つようになってきました。
感染症対策などで、以前よりいろいろと時間がかかるせいかもしれません。
男性も時間に余裕をもって動いたほうが安全です。
開場時間と開演時間
・開場時間:ホールにお客さんが入れるようになる時間。
つまり、その時間からホール内の自分の席に座ることができます。
・開演時間:コンサートがはじまる時間です。
ホールに到着しても、座席を探したり、何やかや着席までに多少時間がかかるものです。
また、開演時間ぎりぎりに滑り込むと、他のお客さんがすでに着席しているなかに入っていくことになります。
時間に余裕をもってホールに行きましょう。
・日本のオーケストラなどで、開場時間に短いミニ・コンサートを開くところもあったりします。
コンサート・チラシなどでご確認を。
コンサートに間に合わない!!!
・万が一コンサートに間に合わない、遅れてしまったときも、とりあえずホールに行きましょう。
ホールの案内係の人が、ホール内に入るタイミングを教えてくれます。
演奏中は基本的に入れませんので、曲と曲のあいだなどに入ることになります。
遅れた人が座るように臨時で座席を用意してあるホールもありますので、とにかく係の人の指示に従えば何の心配もありません。
・「待ち合わせをしているのに、その相手が遅刻しそう。けれど、チケットは自分が相手の分も持っている」というのもよくあるパターンです。
こういうときは、ホールの人にそのことを相談しましょう。
だいたいは、ホールのチケット担当者がそのチケットを代わりに預かってくれるところが多いです。
そうした対処をお願いできたら、遅刻している相手にそのことを伝えてから先にホールに入っていましょう。
ホールの外で何か配っている
・今後のコンサートのチラシの束だと思います。
たいていのコンサートホールで、ホール入口前のところでコンサートのチラシを配っています。
私はそこでもらったチラシを見るのもコンサートの楽しみのひとつなのでもらっていますが、不要ならもらわなくて大丈夫です。
ちょっと荷物になりますので、そこは自由に判断しましょう。
プログラムはもらえる?
・これはコンサートによって違います。
プログラムを無料で配布してくれるコンサートもあれば、有料のコンサートもあります。
・有料の場合、買うor買わないはもちろん自由です。
パンフレット売り場がホールのどこかに設置されていますので、そちらへ行くとたいていサンプルが置いてあります。
それを見て買うかどうか判断するのもいいと思います。
値段もまちまちで、安いと500円~1000円くらい。
高いと1万円前後のすごい豪華パンフレットも見かけたことがあります。
自分の座席はどこ?
・チケットに座席番号が書かれていますが、初めてだと全然わからないかもしれません。
心配なら事前にネットで調べてもいいですが、ホール内に案内係の方がいますので、その人にチケットを見せて誘導してもらいましょう。
それが仕事の係の人たちなので、別に迷惑でも何でもありません。
お任せしましょう。
・ホール内にはたいてい座席表が数か所、掲示してあります。
そちらを見て、自分で確認することもできます。
・「自分の席に他の人が座っている…」、ごくごくたまにあります。
それから、「自分の席にだれかの荷物が置いてある…」など。
わたしも先日、経験しました。。
列を間違えていたり、ブロックを間違えていたり。
自分で直接話しかけるのが躊躇される場合は、ホールの係の人に相談しましょう。
すぐに解決してくれますので、心配ありません。
座席で前のめりにならない
・2階席や3階席からステージをよく見ようと、つい前のめりになってしまう人がいますが、そうすると、その人より後方のお客さんたちにおどろくほど舞台が見えなくなってしまいます。
この前のめりの問題は、ここ最近、トラブルの原因としてよく見かけるようになりました。
気持ちはわかりますが、マナーです。
座席で前のめりにならないように気をつけましょう。
拍手のタイミング
・これは完全に初心者だとわからないと思います。
とにかく、周りと同じタイミングで拍手をすれば問題なしです。
別にあなたは拍手をするために会場に来たわけではないのだから、そこは適当にまわりに合わせて、音楽を楽しみましょう。
・一応ルールを書くならば、多楽章でできている交響曲や協奏曲などの場合には、楽章と楽章のあいだで拍手はしません。
音楽と音楽のつながりを阻害しないためです。
ただし、たとえば、あまりに第1楽章が素晴らしく演奏された場合などに、自然発生的に拍手が沸き起こるということはあります。
でも、それは本当に珍しいことで、そういうコンサートにぶつかったら、それはとても幸運なことです。
また、宗教曲などでは拍手を一切しないということもあったりします。
そういう場合には、たいてい開演前にアナウンスが入ったり、パンフレットに記載されたりします。
・コロナ禍ということで、「ブラボー」などの声は出さないようにお願いしているホールが今は多数です。
休憩はある?
・たいていのコンサートは前半と後半のあいだに20分ほどの休憩時間があります。
そのあいだに、ホール外で水分を補給したり、トイレに行ったりしましょう。
・ホールから外へ出ることも可能ですが、再入場のためにチケットを持ち出すのを忘れずに。
アンコールはある?
・「定期演奏会」という名前がついているコンサートでは、基本、アンコールがありません。
・そのほかの演奏会では、演奏家次第です。
どんなに拍手をもらってもアンコールは一切やらない人もいますし、例えば、エフゲニー・キーシン(ロシアの名ピアニスト)のように、コンサートがまだ続いているのかと思うくらい大量のアンコールを弾きまくる人もいます。
いずれにしても、聴衆としてはアンコール以前に、コンサートのプログラムでしっかりした充実した演奏を聴かせてくれることを何より望みたいところです。
・アンコールがあったけれど、その曲目がわからないということもよくあります。
たいていのホールの出入口の目立つところに「本日のアンコール曲目」といったホワイトボードを出したり、あるいはホールの公式ホームページ上に後日掲載したりしていますので、それらで確認しましょう。
おしまいに:自分が感じたことに正直になる
・「つまらないと感じていたのに、演奏が終わってみたら、みんなが一生懸命拍手しているし、ブラボーの声まで飛んでいる…」なんていうことはクラシックのコンサートではよくあることです。
難しいところですが、妙にお行儀がいいのが日本のお客さん。
さっきまで寝ていた人が終わった途端、元気に拍手喝采をおくっているのもよく見かけます。
もちろん、人それぞれなので、それも自由です。
・もしあなたが真剣にクラシック・コンサートを楽しみたいのであれば、つまらなかったときは「つまらなかった」という感情を認めましょう。
これ、意外とむずかしいようです。
何といってもお金を払って会場に来ていますから。
何となく、自分を納得させてしまいたい気持ちになるものです。
でも、良いものは良い、悪いものは悪いと認識することが文化を育てることになります。
「あとでネットで見てみるとTwitterでもInstagramでも、みんな絶賛してる…」なんてこともよく起こります。
でも、とにかく自分の感じたことを大切にしましょう。
・良かったなら何がよかったのか、しっかりと心に刻んでください。
曲がよかったのか、指揮者がよかったのか、オーケストラがよかったのか。
悪かったなら、何がつまらないと感じたのか考えてみてください。
そもそも演奏がだめだったのか、あるいは自分のその音楽への理解が追い付いていないのか。
・良いコンサートだったなら、たくさんの拍手を舞台上に送ってください。
そうでなかったら、拍手をしないというのもありです。
実際、私はつまらない演奏会のときには拍手をあまりしません。
そうすることで、文化というものを育てていかなければいけないと思っているからです。
何でもかんでも拍手喝采されているようでは、その国に、ほんとうに優れた文化というのは育まれません。
拍手をしないということについては、以前おもしろい体験をしましたので、お時間のある方はこちらのエッセイを覗いてみてください。
もちろん、ブーイングしろとまでは言いません。
海外では、例えば、天下のウィーン・フィルであれブーイングされることが間々あります。
そうすることで、彼らは文化をしっかりと育てているわけです。
ただ、それはあまり日本の文化には似つかわしくないように感じます。
でも、良かったか悪かったかが、ある程度、舞台上に伝わるようでなければいけないとも思います。
そして、本当に優れたものは、それに見合う評価を与えられなければいけません。
ですので、素晴らしい演奏のときには、手が痛くなるくらい拍手をしてきてください!