NHKラジオのアプリ「らじるらじる」で、ついにクラシック番組の「聴き逃し」放送が開始されました。
このページでは、「聴き逃し」対応番組を中心に、聴きどころや感想を「随時更新」でつづっています。
アプリを使えば、放送直後から1週間後はいつでも聴けますので、興味のわくものがあったら実際に聴いてみてください。
Contents
私のらじお日記~随時更新中~
♫このブログでは、音源をご紹介するときに、オンライン配信されているものを中心にご紹介しています。オンライン配信でのクラシック音楽の聴き方については、「クラシック音楽をオンライン(サブスク定額制)で楽しむ~音楽好きが実際に使ってみました~」という記事にまとめています。
3/16 ロドリーゴの歌
3/16(木)~1週間
クラシックカフェ(公式HP)
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
ラジオ放送のよい点のひとつは、未知の音楽と自然に出会うきっかけをもらえることです。
ここで放送されたホアキン・ロドリーゴ(Joaquín Rodrigo, 1901-1999)の「4つの愛のマドリガル Cuatro madrigales amatorios」というオーケストラ伴奏歌曲も、そうしてFM放送で出会った1曲です。
ロドリーゴといえば、アランフェス協奏曲が突出して有名ですが、スペインの宮廷歌曲をもとにしているというこの歌曲も非常にすばらしい音楽で、古典的な響きをもった、味わい深い歌曲です。
NHKで放送されるときは、必ずといっていいほど、名歌手ビクトリア・デ・ロス・アンヘレス(Victoria de los Ángeles 1923-2005)の録音が紹介されますが、実際、伴奏のパリ音楽院管弦楽団の演奏をふくめ、これはとびぬけて美しい録音です。
まさに名曲の名演奏です。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)
3/15 美しいモンテヴェルディ
3/15(水)~1週間
ベストオブクラシック(公式HP)
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
今週のベストオブクラシックは「歌曲・合唱曲を聴く」というテーマで放送されています。
なかでも、この「ハンブルク・モンテヴェルディ合唱団 Hamburg Monteverdi Choir 」の演奏会は耳をひかれる美しさです。
演奏されたのは、モンテヴェルディ:「聖母マリアの夕べの祈り」、およそ90分の宗教曲。
会場の聖ミヒャエル教会の残響も美しく録音でとらえられていますが、演奏そのものも、響きに対する感覚がとても豊かです。
こうした演奏を教会で聴けるということに、おおきな嫉妬と憧れを感じずにいられない、素敵な演奏です。
3/14 古楽のパイオニア、ブリュッヘンの名演奏
3/12(日)~1週間
名演奏ライブラリー(公式HP)
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
リコーダー奏者であり、18世紀オーケストラの創設者にして名指揮者のフランス・ブリュッヘン( Frans Brüggen, 1934-2014 )の特集が放送されました。
私はブリュッヘンの演奏がとても好きなので、このブログでも紹介する頻度が高い指揮者のひとりです。
どこかにも書きましたが、私が彼の実演に接したのはたった1回。
ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」を18世紀オーケストラととりあげた公演でした。
そのほかにも何かが演奏されたはずなのですが、それすら思い出せないくらい、あまり印象に残らないコンサートで、それ以降、再び実演に接する機会を持たずにおわってしまいました。
マゼールの思い出をつづったときと同様、もう一回くらい、聴きに行くべきだったと今は後悔しています。
この放送では、まず冒頭のラモー:歌劇「ダルダニュス」組曲 Rameau: Dardanus Suiteが素晴らしかったです。
これは、ブリュッヘンが紹介されるときに必ず言及されるといっても良いくらいの名盤で、実際、何度聴いても耳を奪われる新鮮さに満ちた演奏です。
ジャン・フィリップ・ラモー(1683-1764)というフランス・バロックの作曲家になじみがない方は、なおさら、この演奏から耳にしてみると、新しい素敵な出会いになるはずです。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)
そして、やっぱり流れました、ベートーヴェンの「英雄」。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)
これもまた、何度聴いても色あせない録音で、その造形、その音色、その音楽に脱帽の名演奏です。
3/5 大ヴァイオリニスト、フーベルマンの名演奏
3/5(日)~1週間
名演奏ライブラリー(公式HP)
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
13歳のときに、最晩年のブラームスの前で、彼のヴァイオリン協奏曲ニ長調を演奏し、ブラームス本人からヴァイオリンとオーケストラのための幻想曲を作曲すると約束してもらったという逸話を持つ、ポーランド出身の大ヴァイオリニスト、ブロニスラフ・フーベルマン(Bronisław Huberman, 1882-1947)の特集。
残念ながら、その幻想曲はブラームスの死によって実現しませんでしたが、近年、演奏頻度が高くなっているコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲の作曲を依頼したのもフーベルマン、名門イスラエル・フィルの前身であるパレスチナ交響楽団を創設したのもフーベルマン、という具合に、音楽史に非常におおきな足跡をのこしている音楽家です。
ただ、19世紀生まれの音楽家なので、良い状態の録音がそれほど多いわけではなく、出ているCDなども少ないので、その名前だけは中学生のころから知っていましたが、演奏は今回、初めて聴くことができました。
まさに独創性に溢れた演奏。
大胆にして繊細。
名録音として知られるチャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲ニ長調(ウィリアム・スタインバーグ指揮シュターツカペレ・ベルリンとの共演)を聴いても、その自由闊達な演奏におどろき、耳をひかれると同時に、それでもまったく気品が失われない、高貴な音楽性に圧倒されます。
いったいどういう人だったのか知りませんが、きっと、高潔なひとだったのではないでしょうか。
そうでなければ、これほどポルタメントを効かせて自由に弾いたら、多かれ少なかれ低俗になってしまうはずです。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify などで聴けます)
まさに再現不可能というべき演奏で、いかなる名手も、これを真似することは無理でしょう。
凄い演奏です。
伴奏をつけているスタインバーグもたいへん立派で、第1楽章のカデンツァのあとのオーケストラの入り方など、まったく理想的としか言いようがありません。
精神性の高さは、つぎのベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」で、さらに強く感じられました。
あれだけの技巧派なのに、ドイツものでも、これだけの深さを実現してしまうところに、音楽家としての大きさを感じます。
こちらも名ピアニストのイグナツ・フリードマンが、とても立派な伴奏をつけています。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify などで聴けます)
おしまいには、ジョージ・セル(George Szell, 1897-1970)指揮ウィーン・フィルとの共演によるラロ:スペイン交響曲が流れました。
これまた脱帽の名演奏で、ヴィルトゥオーゾの鏡のような演奏。
当時主流だった、カットのある4楽章版での演奏ですが、そうしたことを超えて、音楽の輝きに魅了されます。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)
こうした、アカデミズムと一線を画した演奏、それでいて、通俗的にならず、それどころか精神的な気高さまで感じさせる音楽家に、私たちはいつ再び出会えるのでしょうか。
こうした演奏を録音で聴くたびに、「最近の演奏家を聴いていると、若いころに聴いた、19世紀の二流の演奏家たちのことを連想してしまう」と語った大ピアニスト、シュナーベルの警句を思い出してしまいます。
フーベルマン、凄い芸術家です。
3/2 笑福亭笑瓶さんのこと
3/2(木)~1週間
クラシックカフェ(公式HP)
★らじるらじる「聴き逃し」対応★
番組冒頭にフランスの作曲家ミダリウス・ミヨー(Darius Milhaud, 1892-1974)の「スカラムーシュ」が流れました。
この曲を聴くと、反射的に思い出してしまうのが、笑福亭笑瓶さんがパーソナリティーを務めていた「気ままにクラシック」というNHK-FMの人気番組のこと。
番組のテーマ曲が、ミヨー「スカラムーシュ」の第3曲“ ブラジルの女 ”でした。
この番組のことを思い出すだけでも、少し気持ちが楽しくなるリスナーは、私だけではないはずです。
ある日、NHK-FMでクラシックを聴こうと何となく車のラジオのスイッチを入れると、聞こえてきたのは、意外にも笑福亭笑瓶さんの声。
とっても驚き、とっても嬉しくなりました。
あまりに嬉しくて、そのとき信号待ちをしていた場所まで、はっきり覚えているくらいです。
別に笑瓶さんの大ファンというわけではなかったのですが、「楽しい番組が始まった!」という確信がなぜかありました。
どういう経緯で笑瓶さんがパーソナリティーに選ばれたのかはわかりませんが、笑瓶さんがこの番組のパーソナリティーになったのが2008年の4月。
私が偶然耳にしたのも、まさにその2008年の4月でした。
それからほとんど毎週聞き続けて、でも、ちょっと早すぎる2012年3月で番組は終わってしまいました。
かなりの高聴取率だったはずなので、笑瓶さんの都合だったのでしょうか。
わずか4年だったわけですが、忘れられない4年間です。
リスナーの素朴な疑問に答える「キアーロ」のコーナーや、笑瓶さんがリスナーお薦めの曲(5分以内)を聴いて感想を言う「名曲温泉」のコーナーなど、名物コーナーがいろいろとありました。
笑瓶さんがどれくらいクラシックを普段聴いていたのかもわかりませんが、飾らない言葉で発せられる、ちょっとした感想のなかに、ドキッとするような深い言葉があったりして、ただの娯楽番組ではない、たのしい「音楽番組」でした。
私の記憶では、当時の番組で使用されていたミヨー「スカラムーシュ」は、ブランフォード・マルサリスのサックス・ソロにオルフェウス室内管弦楽団がつけている録音だったと思います。
ですので、ここには、その音源をリンクしておきたいと思います。
毎週耳にしていた番組。
それが、いつの間にか、こうして「思い出」のひとつになっていってしまいます。
笑瓶さん、たのしい時間をありがとうございました。
( Apple Music↑ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)
「クリエイション~20世紀フランス音楽作品集」Amazon
補足1:「らじるらじる」のアプリについて
アプリのダウンロードについては、公式ホームページのアプリダウンロードのページにくわしく載っていますが、ほかのアプリと同様、Apple StoreやGoogle Playからダウンロードすればいいだけです。
無料のアプリなので、通常かかる通信費など以外に特別な費用はかかりません。
また、PCの場合は、こちらのメインページから直接ストリーミングで聴くことができます。
補足2:現在おすすめの聴き逃し対応クラシック番組一覧
各公式ホームページには、これからの放送予定と、聴き逃しについての情報が掲載されています。
★特におすすめの3つの番組
クラシック・カフェ(番組公式HP)‥さまざまなクラシック音楽を丁寧な解説付きでたのしめる一押しの番組。
名演奏ライブラリー(番組公式HP)‥作曲家というより、演奏家に焦点をあてた番組で、満津岡信育さんのわかりやすい解説でお薦めの番組。
ベスト・オブ・クラシック(番組公式HP)‥国内外のコンサートのライブ録音を解説付きで紹介してくれる、新鮮度抜群のクラシック番組。
☆そのほかのお薦め番組
N響演奏会(番組公式HP)‥NHK交響楽団の演奏会を生放送する特別枠の番組。
ビバ!合唱(番組公式HP)‥広く合唱をあつかう番組で、他ジャンルがメインの日もありますが、クラシック音楽もおおく扱われます。
吹奏楽のひびき(番組公式HP)‥日本は吹奏楽王国。吹奏楽に親しんだ経験のある方は必聴の番組。
現代の音楽(番組公式HP)‥作曲家の西村朗さんの絶妙な解説がすばらしい、現代音楽をあつかう番組。
ブラボー!オーケストラ(番組公式HP)‥国内のオーケストラのライブ録音を放送する番組。演奏会の予習・復習に最適の番組。
ここにご紹介したほかにも、NHKのラジオではクラシック番組がいろいろと放送されていて、「NHK-FMの歩き方、クラシック音楽をラジオでたのしもう♪~ラジオの聴き方とお薦め番組」という記事でもご紹介しています。