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日本のクラシック音楽をけん引した「世界のオザワ」こと、指揮者の小澤征爾(おざわ・せいじ、1935-2024)さん。
このシリーズでは、小澤征爾さんの録音で50人の作曲家にふれながら、クラシック音楽の歴史を旅します。
この機会に「クラシック音楽を聴いてみよう」という方向け、クラシック入門シリーズです。
シリーズ一覧はこちらのページで確認できます。
目次(押すとジャンプします)
36:アルバン・ベルク(Alban Berg, 1885-1935)
無調のなかに人間的情感
シェーンベルクが切りひらいた「新ウィーン楽派」。
その代表的な作曲家のひとりがアルバン・ベルク(Alban Berg, 1885-1935)です。
10代のころは、女中さんとのあいだに私生児をつくったり、受験に失敗して自殺未遂をおかしたりと、波乱万丈な人生を歩んでいました。
そんな多感な彼が作曲した作品を、お兄さんがシェーンベルクに見せに行ったところから、音楽家への道が開かれました。
師となったシェーンベルクと同様に、調性のない無調の音楽、十二音技法といった先進的な作曲技法をもちいているのの、そこに、後期ロマン派の残照のような、“ 情感 ”がほのかに見られるのがベルクの特徴といえるかもしれません。
小澤征爾さんで聴くベルク
ある天使の想い出に
大作曲家マーラー(Gustav Mahler, 1860-1911)の奥さんだったアルマ・マーラーには、2番目の夫とのあいだに、マノン・グロピウスという娘さんがいました。
親交のあったベルクは、このお嬢さんを非常に可愛がっていましたが、そのマノンがポリオのため18歳の若さで亡くなってしまいます。
その悲しい知らせに、ベルクが猛烈な速度で書きあげたのが「ヴァイオリン協奏曲」です。
「ある天使の想い出に」という献辞があるため、これがニックネームとして定着しています。
もともと自身も病弱だったベルク。
この作品を作曲中に自身も体調を崩し、結果的に、これがベルクが完成させた最後の作品になりました。
1935年、ベルク50歳の年のこと。
小澤征爾さんは、名手イツァーク・パールマン(Itzhak Perlman、1945年8月31日 – )と、この名曲を録音しています。
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37:セルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov, 1873-1943)
ロシアのロマン
「新ウィーン楽派」を先頭に、19世紀末は、前衛的でより急進的な音楽が目立ち始めますが、そうした流れに飲み込まれなかった大作曲家たちもいます。
そのひとりが、ロシアに生まれた、非常に美しい旋律線を生み出すセルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov, 1873-1943)です。
貴族の生まれで、子どもの頃に家族が破産するという不運にみまわれたものの、音楽的にはロシアの最高の教育を受けて育ちました。
先輩作曲家チャイコフスキー(Pyotr Ilyich Tchaikovsky, 1840-1893)はラフマニノフの才能に早くから注目、ラフマニノフのほうも、生涯、チャイコフスキーを敬愛し続けました。
ラフマニノフは演奏家としても20世紀前半を代表する大ピアニスト。
1オクターヴ半を片手でおさえられるという、たいへん大きな手をしていたようです。
その高度な技巧が反映されたピアノ曲を中心に、作品番号で45の名曲が残されました。
実はその大半が、1917年のロシア革命以前に書かれていて、革命を機に祖国を去り、二度と祖国へ帰ることのなかったラフマニノフにとって、“ ロシア ”の大地がいかに重要な意味を持っていたのかが偲ばれます。
小澤征爾さんで聴くラフマニノフ
ピアノ協奏曲第2番&第3番
小澤征爾さんは、ラフマニノフのピアノ協奏曲で名録音を多く残しています。
まずは、ラフマニノフの最も有名な作品「ピアノ協奏曲第2番」。
こちらでは、ポーランド出身の名ピアニスト、クリスチャン・ツィメルマン(Krystian Zimerman, 1956年12月5日 – )と共演。
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つぎに、同様に傑作として名高い「ピアノ協奏曲第3番ニ短調」。
こちらではロシア出身の名手エフゲニー・キーシン(Evgeny Kissin,1971年10月10日-)と、当時非常に話題になった録音を残しています。
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38:グスターヴ・ホルスト(Gustav Holst、1874-1934)
“ ジュピター 木星 ”の作曲家
ラフマニノフがロシアに生まれた翌年、イギリスには「木星 ジュピター」で名高い作曲家グスターヴ・ホルスト(Gustav Holst、1874-1934)が生まれています。
作曲家だけで食べていくことが容易ではなく、高い名声を得るまでは、優れたトロンボーン奏者として、また優れた教育者として教壇に立っていました。
彼の作品というと、何といっても組曲「惑星」。
この作品は自身がおどろくほどの成功を作曲者にあたえました。
ホルストの困ったところは、代表作である組曲「惑星」が突然変異的なものであることです。
つまり、「惑星」を入口にホルスト作品に親しもうと思っても、ほかに似ている作品がないということです。
ホルストの他の作品では、吹奏楽部に入ると出会かもしれない「吹奏楽のための組曲第1番&第2番」、弦楽合奏部で出会うかもしれない「セントポール組曲」などが、「惑星」のつぎに触れるべき作品かもしれません。
前者にはトロンボーン奏者だった経歴が、後者には女学校に本格的な音楽教育を持ち込んだ教育者としての姿がかいまみれます。
小澤征爾さんで聴くホルスト
組曲「惑星」
学校の教科書でも教えられたりするホルストの組曲「惑星」。
なかでも、第4曲の「木星」は中間部に流麗な旋律があり、強い魅力を放っています。
小澤征爾さんは1979年にボストン交響楽団と、「惑星」全曲を録音しています。
まずは、やっぱりいちばん有名な「木星」からどうぞ。
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39:チャールズ・アイヴズ(Charles Edward Ives、1874-1954)
生活は保険業で
イギリスにホルスト(Gustav Holst、1874-1934)が生まれた年、アメリカではチャールズ・アイヴズ(Charles Edward Ives、1874-1954)が生まれています。
南北戦争時、軍楽隊のリーダーだったという父親から音楽を学んだアイヴズ。
その父親がたいへん独創的な発想の持ち主だったようで、息子も同様に音楽的「実験」を重ね、まったく独自の音楽世界を構築するに至りました。
とはいえ、自身の斬新な音楽語法が一般聴衆にすぐに受け入れられるはずがないとわかっていたアイヴズは、「保険業」をなりわいとし、その分野でしっかり成功をおさめました。
「不協和音で我が子を飢え死にさせるわけにいかないだろう」とはご本人の言葉。
アイヴズの予想通り、大衆に作品が評価されるには長い時間が必要でしたが、アメリカに移住したシェーンベルクなどはアイヴズを高く評価し、「この国にも偉大な作曲家が。彼の名前はアイヴズという」というメモまで残しています。
また、ニューヨーク・フィルの指揮者だったマーラーは、アイヴズのことを音楽の「革命家」と称賛しました。
53歳になる1927年のある日、「もう作曲ができない」と涙を浮かべて奥さんに語ったアイヴズ。
それ以降、新作を書くことはありませんでした。
彼の評価が本当の意味で高まったのは、亡くなってしばらくして、20世紀後半から21世紀初頭のこと。
現在では、アメリカ最初期の独創的作曲家として評価が定まっています。
小澤征爾さんで聴くアイヴズ
交響曲第4番
アイヴズ作品で、最高傑作のひとつとされるのが「交響曲第4番」。
巨大編成のオーケストラが必要で、そのうえ、あまりの複雑さから、指揮者を2,3人置くこともある、演奏自体が非常に困難な作品です。
1910~20年代に書かれたと推測されていますが、初演はアイヴズ没後11年後のこと。
ここでは、「コメディー」と題された第2楽章をご紹介します。
アイヴズらしく、複数の旋律が、お互いに無関心であるかのように、複雑に重複していきます。
讃美歌が鳴り響いたり、行進曲のようなものが聴こえてきたり。
「喧騒の美化」と言っていいような、凄い音楽です。
こうした複雑な作品こそ、小澤征爾さんの得意とするところ。
めちゃくちゃな中に秩序が築かれ、かみ合わないものがかみ合っていきます。
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40:マヌエル・デ・ファリャ(Manuel de Falla、1876-1956)
スペインの大作曲家
スペインに生まれ、フランスで成功し、晩年はアルゼンチンに亡命、その地で亡くなったのがマヌエル・デ・ファリャ(Manuel de Falla、1876-1956)です。
バレエ音楽「恋は魔術師」「三角帽子」、「スペインの庭の夜」、歌劇「はかなき人生」などの傑作を残しました。
いずれも、魅力的な旋律線、活き活きとしたリズム、そして、母国スペインの色が濃厚な表現に特徴があります。
非常に親しみやすい印象の作曲家ですが、いっぽうで、その作品がストラヴィンスキーも活躍したバレエ・リュスで初演され、デュカスを筆頭にラヴェル、ドビュッシーらからも評価されたように、イメージ以上に、この時代の先端を生きていた作曲家のひとりでした。
耳なじみのよい作品のなかにも、巧みに消化された前衛的、革新的な表現が聴かれるところに、この作曲家の奥深さを感じさせられます。
小澤征爾さんで聴くファリャ
バレエ音楽「三角帽子」
三角帽子というのは、このバレエで登場する悪代官がかぶっている帽子のこと。
粉屋の女房に言い寄る好色な悪代官が、最後にはみんなにこらしめられるという、勧善懲悪の、普遍的なテーマを題材にしたバレエです。
この作品は、当時の音楽界を席巻していたディアギレフ率いるバレエ・リュスにより、1919年にロンドンで初演、大成功を収めました。
巨匠エルネスト・アンセルメ(Ernest Ansermet, 1883-1969)の指揮、さらに、舞台美術と衣装は、あのパブロ・ピカソ(Pablo Picasso, 1881-1973)が担当という、伝説的な舞台となりました。
小澤征爾さんは1976年、ボストン交響楽団とバレエ音楽「三角帽子」の全曲を録音しています。
明朗で、色彩的な演奏が聴かれます。
メゾ・ソプラノは、スペイン出身の名歌手テレサ・ベルガンサ(Teresa Berganza、1933-2022)という豪華版。
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