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ご本人に聞いてみないとわかりませんが、おそらく、今回の「マタイ受難曲」はうまくいった公演ではなかったでしょう。
ジョナサン・ノットにとって、むしろ、今後の音楽人生における「宿題」をもらった公演になったのではないでしょうか。
ジョナサン・ノット&東京交響楽団のラスト・シーズン。
そのプログラムのなかで、私にとって、もっとも意外な選曲だったのがバッハ:「マタイ受難曲」。
彼はいったい、どんなバッハをやるのか。
ジョナサン・ノット(指揮)東京交響楽団
バッハ:マタイ受難曲
2025年9月28日(日)14:00@ミューザ川崎シンフォニーホール
暗中模索のバッハ
演奏がはじまって、思いのほか開放的に鳴らされるオーケストラに、これまた意外な印象を受けました。
ハイドンやモーツァルトでは、音楽がはっきりと小ぶりになる傾向のあるノット。
それが、時代的により古いバッハでは、オルガンをはっきりと鳴らし、骨太の響きを導き出すことに驚きました。
骨太の響きといっても、リヒター(Karl Richter, 1926-1981)に代表されるモダン・オーケストラのバッハ像では当然なく、といって、アーノンクール(Nikolaus Harnoncourt、1929-2016)などの古楽アプローチのバッハ像との折衷というわけでもなく。
つまりは、これまでの演奏家が聴かせたものとは違う、“ 新しいバッハ ”をノットは目指しているようでした。
それも、ただいたずらに新しさを求めているのではなく、いかにもノットらしく、これまでの演奏家たちが歩んだ道をさらに進めた先での新しさを求めているように、わたしには感じられました。
ただ、聴き進んでいくと、その新しいバッハをノット自身、“ まだ ”見つけることができていないのではないか、と感じられてきました。
彼にしてはめずらしく、どこか確信を欠いた、何かを懸命に“ 模索している ”ような、そんな指揮ぶりが見てとれました。
♪アーノンクール指揮の「マタイ受難曲」♪
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特別な存在
バッハというのは、ほんとうに特別な存在です。
わたしはそれを、以前、ギエルミのオルガン・リサイタルではっきりと目にしました。
ほかの作曲家の作品たちが、バッハが鳴り響いた瞬間、一斉に脇にどき、バッハの書いた音符たちのために道を開けていった、あの光景。
バッハの偉大さを見せつけられた光景でした。
今回はバッハもバッハ、その最高傑作と名高い「マタイ受難曲」。
ノットは「マタイ受難曲」をこれまでに指揮したことはあったのでしょうか。
おそらく、今回が初めてだったのではないでしょうか。
ノットがこれほどはっきりと作品に跳ね返され、作品のなかへ入れずにいる姿は初めて見るものでした。
バッハの威容
偉大なるバッハ。
私がはじめて「マタイ受難曲」を聴いたのは、ずっと昔、宗教音楽の大家ミシェル・コルボ(Michel Corboz, 1934-2021)の来日公演でした。
CDなどでの予習もあえてせずに行ったサントリーホール。
そもそも「マタイ受難曲」がこれほど長い、3時間以上もかかる作品とは知らず、終演後、終電に乗り遅れ、友人の家に泊めてもらった思い出があります。
初めて聴いた「マタイ受難曲」は、感動というよりも、初めて音楽に“ 畏怖 ”を覚えました。
そんなに頻繁に、手軽に耳にしてはいけない作品のように思えました。
その特別な「マタイ受難曲」をジョナサン・ノットが取り上げるということで、期待と、若干の不安を感じながら聴きに行った公演でしたが、なるほど、この作品の威容をさらに印象付けられる公演になりました。
♪コルボ指揮の「マタイ受難曲」♪
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宿題
ここまで書いておいて何ですが、実は、私は前半しか聴いていません。
前半の80分を聴いて、このつづきは、いずれまた必ずノットが指揮するであろう、つぎの機会、未来の公演にとっておこうと思い、席をたちました。
なので、もしかしたら後半は素晴らしかったかもしれません、が、どうでしょう。
おそらく、後半も前半の延長のようになったのではないかと思います。
ノットは、必ず、この「マタイ受難曲」を再度採り上げるはずです。
それも、しばらく先の未来で、すぐにではないと思います。
今回ノットがバッハからもらった「宿題」は、それくらい大きなものに私には見えました。
でも、決して聴きに行って損をした、というような印象ではありません。
ジョナサン・ノットの、これから深まり、高まっていくであろう「マタイ」の原初のものを体験した、という思いでいます。
声楽について
おしまいに、声楽について。
【声楽陣】
ソプラノ:カタリナ・コンラディ
メゾソプラノ:アンナ・ルチア・リヒター
エヴァンゲリスト(テノール):ヴェルナー・ギューラ
イエス(バリトン):ミヒャエル・ナジ
テノール:櫻田亮
バリトン:萩原潤
バス:加藤宏隆
合唱:東響コーラス
児童合唱:東京少年少女合唱隊
合唱指揮:三澤洋史
さすが、というか、ノットはどの公演でも隅々まで良い歌手をそろえるので感心してしまいます。
今回も、出番の少ない日本人歌手にいたるまで、全員が素晴らしい歌唱を聴かせていました。
昔、素晴らしいシューマンの歌曲をCDで聴いたヴェルナー・ギューラ(Werner Güra)がエヴァンゲリストで出ていたのも、懐かしいとともに、うれしかったです。
♪ヴェルナー・ギューラのシューマン歌曲集
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声楽で一点気になったとすれば、東京少年少女合唱隊の児童合唱が「子どもの声」に聴こえなかったこと。
磨き上げられすぎて、「やや幼い女声」と言ったほうがいいくらい、均整のとれた、ほとんど大人顔負けの声。
それゆえに、あまりに上手すぎて、バッハが児童合唱を取り入れた効果は半減しているように聴きました。
児童合唱は、子ども時代にしか出せない声で、「いかにも子どもが歌っている」と感じられるほうが大切なように私は感じました。

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