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日本のクラシック音楽をけん引した「世界のオザワ」こと、指揮者の小澤征爾(おざわ・せいじ、1935-2024)さん。
このシリーズでは、小澤征爾さんの録音で50人の作曲家にふれながら、クラシック音楽の歴史を旅します。
この機会に「クラシック音楽を聴いてみよう」という方向け、クラシック入門シリーズです。
シリーズ一覧はこちらのページで確認できます。
目次(押すとジャンプします)
41:オットリーノ・レスピーギ(Ottorino Respighi, 1879–1936)
イタリア器楽曲の大家
イタリアの作曲家というと、オペラや声楽の作曲家が多いなか、オットリーノ・レスピーギ(Ottorino Respighi, 1879–1936)は、例外的に、オーケストラ曲などの器楽曲に名作を残した作曲家です。
若いころは優れたヴァイオリン奏者、ヴィオラ奏者として活躍。
その腕前をいかして、一時期、ロシアの楽団で首席ヴィオラ奏者をつとめます。
その本当の目的は、当時ロシアにいた管弦楽法の大家リムスキー=コルサコフ(Nikolai Rimsky-Korsakov, 1844-1908)に直接指導を受けること。
これは、彼にとってたいへん大きな財産になりました。
その華麗なオーケストラ書法で、“ ローマ三部作 ”や「リュートのための古風な舞曲とアリア」、日本で、特に吹奏楽の世界で人気のあるバレエ音楽「シバの女王ベルキス」などの名作をものにしました。
奥さんによれば、彼の息抜きは「語学」の勉強。
10か国語前後を話せたそうで、リムスキー=コルサコフともロシア語で会話できたそうです。
小澤征爾さんで聴くレスピーギ
小澤征爾さんの高度なオーケストラ処理能力と、とても相性がよかったのがレスピーギの作品群。
ボストン交響楽団とすばらしい録音を刻み込んでいます。
ローマ三部作
まずは、レスピーギの代表作である“ ローマ三部作 ”。
これは、「ローマの噴水」「ローマの松」「ローマの祭り」という、3つの交響詩の総称。
小澤征爾さんは、ボストン交響楽団と「ローマ三部作」の名盤を生み出しています。
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リュートのための古風な舞曲とアリア
小澤征爾さんは、レスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア」についても名盤を残しています。
有名な第3組曲にかぎらず、第1・第2組曲も魅力的に演奏されています。
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42:バルトーク・ベーラ(Bartók Béla、1881-1945)
現代的ハンガリー音楽
民俗音楽の研究からインスピレーションを得て、現代的な書法で独自のスタイルを確立したのが、ハンガリーに生まれたバルトーク・ベーラ(Bartók Béla、1881-1945)です。
現代的なハンガリー音楽で音楽史に名前を刻むことになる彼も、当初はベートーヴェンやブラームス、R・シュトラウスなどのドイツ・オーストリア音楽の影響下にありました。
“ ハンガリー音楽 ”というアイデンティティーに目を向けるべきだという友人エルンスト・フォン・ドホナーニ(Ernst von Dohnányi、1877-1960)や、すでに民謡の研究を開始していたゾルターン・コダーイ(Kodály Zoltán, 1882-1967)の影響から、段々と自身の道を見つけ始めます。
ピアニストとしても大変な腕前で、とある国際コンクールで、あの「鍵盤の師子王」ヴィルヘルム・バックハウス(Wilhelm Backhaus, 1884 – 1969)に次ぐ第2位に入ったことが知られています。
作曲家として大成するものの、第二次世界大戦の勃発、祖国ハンガリーの政治体制の硬化、ナチスへの嫌悪からヨーロッパを去ることを決意。
59歳の年にアメリカへ移住します。
しかし、間もなく健康を害し、「無伴奏ヴァイオリンソナタ」や「管弦楽のための協奏曲」といった傑作を生みだすものの、64歳で不遇な晩年のなか亡くなっています。
小澤征爾さんで聴くバルトーク
管弦楽のための協奏曲
アメリカに移住したものの、戦争の混乱から印税収入が滞り、経済的に困窮してしまったバルトーク。
さらには白血病を患い、深い失意のなかにいました。
数多くの友人たちが彼に援助の手をさしのべますが、そのひとつが、アメリカで活躍していたロシア人指揮者クーセヴィツキー(Serge Koussevitzky, 1874-1951)による新作の委嘱でした。
そうして生まれたのが「管弦楽のための協奏曲」。
初演も大成功で、以来、現在においても頻繁に世界中で演奏される人気作となっています。
この仕事はバルトークの創作意欲をおおいに刺激したようで、その後、晩年の傑作が相次いで生み出される契機ともなりました。
この作品の初演は、1944年、委嘱したクーセヴィツキーが指揮するボストン交響楽団によって行われました。
それから29年後の1973年、この楽団の音楽監督となったのが小澤征爾さんでした。
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この演奏は1994年のライヴ録音で、「世界初演」されたときの版を使っています。
フィナーレが現行版とちがって、唐突に終わります。
初演を聴いたバルトーク本人がそこを気にして、現在の形のフィナーレへと筆が加えられたそうです。
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小澤征爾さんは複数回この作品を録音していますが、ボストン交響楽団とのライヴ録音以外は、通常の版で録音しています。
43:イーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky、1882 – 1971)
まさに革命児
1913年、パリのシャンゼリゼ劇場は、ある新作バレエの上演で大混乱におちいりました。
音楽が始まるや、笑い声が起こり、野次がとびかい、やがて、その音楽を支持するひとと嫌悪するひとが口論となり、果ては殴り合いにまで発展する大スキャンダルとなりました。
バレエ「春の祭典」の初演の光景です。
この作品をうみだしたのが、ロシアの作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキー(Igor Stravinsky、1882 – 1971)です。
原始主義といわれる大胆なリズムと色彩は、クラシック界に革命的な影響をおよぼしました。
時期によって、音楽のスタイルがおおきく変わったことも大きな特徴で、作風がカメレオンのように変化しました。
「春の祭典」のような過激で原始主義的な作品もあれば、古典的な美しさを誇る「プルチネッラ」のような作品も生み出し、あるいは、ジャズの要素を取り入れた「エボニー協奏曲」のような作品もあります。
こうした特徴は、同時代の画家ピカソ(Pablo Picasso, 1881-1973)と似ていて、激動の時代の反映ともいえるかもしれません。
小澤征爾さんで聴くストラヴィンスキー
バレエ音楽「春の祭典」
小澤征爾さんがシカゴ交響楽団を指揮したバレエ音楽「春の祭典」。
初めてストラヴィンスキーに触れる方は、第1部のクライマックスである“ 大地の踊り ”からどうぞ。
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この録音の際、ストラヴィンスキー本人の希望で、この曲をわかりやすく書き直した別ヴァージョンの録音も行われたそうです。
指揮の専門家ではないストラヴィンスキーでも振りやすいよう、簡易的に書きなおされたとも言われるその新ヴァージョン。
小澤さんも楽団員も納得がいかず、結局、従来のヴァージョンだけが発売されて、今日に至っています。
44:セルゲイ・プロコフィエフ(Sergei Prokofiev、1891-1953)
日本に立ち寄った最初の大作曲家
1918年、ロシアを離れ、アメリカをめざすことを決意したセルゲイ・プロコフィエフ(Sergei Prokofiev、1891-1953)は、その旅の経由地として、日本を訪れます。
およそ2カ月間の滞在。
数回のピアノ・リサイタルを開き、さらには、奈良滞在中に構想が練られた作品は、のちに名作「ピアノ協奏曲第3番」へと昇華されました。
結果的に、歴史的な存在となる大作曲家が日本を訪れた、最初の出来事となりました。
プロコフィエフは、「ピーターと狼」、「ロメオとジュリエット」、「シンデレラ」、「古典交響曲」など、独自の抒情性に満ちた作品を残した大作曲家でしたが、いっぽうで、先輩ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov, 1873-1943)を挑発するようなことをしたり、なかなか人間的には付き合いづらい性格のひとだったそうです。
小澤征爾さんで聴くプロコフィエフ
ロメオとジュリエット
小澤征爾さんは、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とプロコフィエフの交響曲全集もつくっているくらい、縁の深い作曲家。
小澤さんのプロコフィエフのなかでは、特に、バレエ音楽「ロメオとジュリエット」が印象深いです。
これは、小澤征爾さんのすべての録音のなかでも、特に出色のものだと思います。
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45:カール・オルフ(Carl Orff, 1895 – 1982)
劇場音楽こそ未来の音楽
「純音楽の形式はもう開拓されつくしてしまった。劇場音楽こそ、これからの音楽だ」という信念のもと、オペラや劇音楽を中心に作曲活動を展開したのが、ドイツの作曲家カール・オルフ(Carl Orff, 1895 – 1982)です。
彼の作品というと、何といっても世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」。
特に冒頭と終曲におかれた“おお、運命の女神よ”は、映画、ドラマ、ポップス、テレビCM…と、数えきれないほどの場面で引用され、使われています。
オーケストラ・コンサートの人気曲として、しばしばコンサートホールで演奏されるこの「カルミナ・ブラーナ」。
実は、本来はバレエをともなう舞台のための音楽。
劇場音楽こそ開拓すべきジャンルという信念が実った、オルフの代表作となっています。
小澤征爾さんで聴くオルフ
カルミナ・ブラーナ
小澤征爾さんには、1988年、ベルリン・フィルとレコーディングした有名な録音があります。
さらに翌年の大晦日には、やはりベルリン・フィルのジルヴェスター・コンサートでこの作品がとりあげられ、そちらは映像作品としてライヴ収録され、以前、リリースされていました。
それらはあまりに有名なものですので、ここでは、手兵のボストン交響楽団を指揮しての1969年の録音をご紹介します。
若き日の小澤さんらしい「清潔な緊張感」で緻密に組み立てられていく、後年のものとは一味も二味もちがう、とっても興味深い「カルミナ・ブラーナ」が刻まれています。
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イブリン・マンダック(ソプラノ)
スタンリー・コーク(テノール)
シェリル・ミルンズ(バリトン)
ボストン交響楽団
ニュー・イングランド音楽院合唱団&児童合唱団
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