シリーズ〈音楽の処方箋〉

【クラシック音楽の音楽処方箋】さわやかな朝の時間をもちたいときの名曲4選

 

小さな音楽処方箋、今回は「さわやかな朝の時間をもちたい」ときのクラシック音楽。

このブログらしく、演奏者にもこだわってご紹介していきます。

ヘンデル:“シバの女王の入城”~オラトリオ『ソロモン』

バッハが音楽の父であれば、音楽の母と称されるのがヘンデル。母といってもヘンデルは男性です。

このふたり、実はまったく同じ年に、同じドイツに生まれています。何とも不思議な偶然です。

バッハがドイツだけで生涯をすごしたのと対照的に、ヘンデルは海を渡ってイギリスで活躍するなど、国際的な活躍をみせた点が大きく違っています。

彼の音楽はバッハよりも華やかな側面が強いので、朝にうってつけの音楽がいろいろあります。

今回はオラトリオ「ソロモン」から、“シバの女王の入城”の音楽。

この曲は、わりと誰が演奏しても同じようにうまくいく曲なので、少し変わったところで、オランダのリコーダー奏者ルーシー・ホルシュ( Lucie Horsch )とアカデミー室内管弦楽団が演奏する、リコーダーをフィーチャーした編曲のものを。

リコーダーが際だっていて、編曲も演奏もとっても新鮮です。
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バッハ:“羊は安らかに草をはみ”~『たのしき狩りこそ我がよろこび』

これはしばらく前まで、NHKのFMラジオ番組「あさのバロック」のテーマ音楽になっていた曲。朝6時、ラジオのスイッチを入れると、この音楽がながれてきて、どんなに眠くても自然にひきこまれてしまいました。

こういう的確なチョイスは、さすがNHKだと思います。

もともとは、バッハが20代後半に書いた、世俗カンタータ『たのしき狩りこそ我がよろこび』BWV208の第9曲。

本来はソプラノの歌、リコーダー2本と通奏低音という編成ですが、とても人気のある曲なのでさまざまなアレンジで演奏されています。

カンタータというのは、カンタービレ(歌うように)と同じで、簡単にいえば「歌」ということです。「狩り」がテーマとして選ばれているのは、狩りを趣味としていた貴族にささげるために作曲されたからです。

その土地の領主、すなわち羊飼いがしっかりしているから、安心して庶民、すなわち羊が安らかな気持ちで過ごせるということで「羊は安らかに草をはみ」という詞がついています。

ここでご紹介するのはバロック演奏の大家カール・ミュンヒンガー指揮シュトゥットガルト室内管弦楽団の演奏。

ミュンヒンガー自身による編曲で、オーケストラだけで演奏されています。

いろいろな演奏で聴いても、やっぱりこの演奏に戻ってきてしまう、すばらしい録音。
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ヘンデル:Ⅱ.アルマンド~ハープシコード組曲第1番

ヘンデルをもう1曲。ハープシコード組曲第1番から第2曲“アルマンド”。

これは天才ピアニスト、グレン・グールドがめずらしくハープシコードで録音をした名演奏でご紹介します。

グールドはカナダ出身のピアニスト。活動の途中からライブ演奏を否定して、スタジオにこもって録音だけをするようになった異彩のピアニスト。今でも、ジャンルを超えて、カリスマ的な人気を誇る人です。

有名な『ゴールドベルク変奏曲』を筆頭に、とりわけバッハの作品をピアノで演奏して、音楽史に大きな足跡をのこしている彼ですが、意外にも、バッハと同時代のヘンデルはほとんどやりませんでした。

しかも、ピアノではなく、あえてハープシコードを弾いての録音。グールドによれば、「面白そうだから」ハープシコードで弾いてみたそうですが、なにをやっても意外性にあふれる天才です。

実際、とってもおもしろいのは間違いありませんし、爽快に弾かれていくなかで、やっぱり彼らしい抒情性があって、耳を奪われる演奏です。
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レスピーギ:ベルガマスカ~「リュートのための古風な舞曲とアリア」第2組曲

おしまいは、少し派手さのある、さわやかだけど目の覚めそうな音楽を。

イタリアの作曲家レスピーギの代表作は、何といっても交響詩『ローマの噴水』『ローマの松』『ローマの祭り』のいわゆる“ローマ三部作”です。

そして、それとならんで傑作とされているのが『リュートのための古風な舞曲とアリア』第3組曲。

でも、ここにご紹介するのは、その第2組曲のほうです。めったに演奏会でもやられませんが、私はとても好きな曲です。

題名にある「リュート」はギターのおじいちゃんのような弦楽器。そのリュートのために書かれた古い曲を、レスピーギがオーケストラ作品にアレンジしたものになっています。

レスピーギはローマにある音楽院で教授をしていたときに、そこの図書館にある古い楽譜をいろいろと研究していて、そこからインスピレーションを得て、3つの組曲へとつながったようです。

第2組曲はレスピーギ40代半ばの作品、時期的に有名な交響詩『ローマの松』を書いていたころになります。

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演奏は小澤征爾さんの指揮するボストン交響楽団で。このコンビはレスピーギを得意としていて、レスピーギのローマ三部作にも名録音があります。

小澤征爾さんは、生演奏で聴くとより実感できるのですが、アンサンブルの名匠です。オーケストラから、完璧に絶妙なバランスを引き出し、みごとにそれを構築していきます。ひとつひとつの音の安定感、響きの奥行が、群を抜いて素晴らしい方です。

その意味で、小澤征爾さんはCDなどで聴くよりも、生演奏で聴く方がその素晴らしさがダイレクトに伝わってくるタイプです。

それでも、このレスピーギの録音は、そうした小澤征爾さんの魅力がしっかりと捉えられている、数ある小澤征爾さんのCDのなかでも特に素晴らしい記録になっています。

これは本当にお薦めの名曲名演奏です。

というわけで、朝の時間にぴったりな音楽を選んでみました。どれか1曲でも、あなたの朝にぴったりな音楽があればうれしいです。

小さな音楽処方箋 ”のシリーズでは、さまざまなシーンに合ったクラシック音楽をこれからも提案していきます。

すてきな一日になりますように。

 

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