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声楽陣は日本人ばかり。
ジョナサン・ノットの演奏会形式のオペラで、主役から端役まで、みんな日本人というのはかなり珍しいはず。
上岡敏之さんが指揮した「さまよえるオランダ人」のときも感じましたが、日本人歌手のレベルの向上たるや、ひと昔前とは隔世の感があります。
今回の公演でも、不満を感じないどころか、すっかり感心してしまいました。
声はもちろんのこと、演技力、ちょっとした所作に至るまで、日本の声楽界はこんなにも飛躍していたんだと、目を見張りました。
ジョナサン・ノット(指揮)東京交響楽団
ラヴェル:子どもと魔法
2025年11月15日(土)14:00@東京オペラシティ
特別演奏会
ヴェル:歌劇「子どもと魔法」(演奏会形式)
ドビュッシーとデュリュフレ
コンサート前半は、ドビュッシー:「夜想曲」よりシレーヌ、そして、デュリュフレ:「3つの舞曲」。
ノットの指揮するドビュッシーは、以前に聴いたときも、どこか乾いた感触があって、今回の“ シレーヌ ”もやはりそう。
一般にこの作品から受ける幻想的な性格よりも、明瞭さのほうが前面に感じられました。
でも、やっぱりこの作品は、もっとずっと幻想的な響きで装われるべきなんじゃないかと、そう感じました。
この作品は、ノットが東京交響楽団との初共演の際にもプログラムされていたそうで、音楽監督としての任の締めくくりに敢えてとりあげたそうです。
つづくデュリュフレ(Maurice Duruflé, 1902 – 1986)の舞曲ははじめて耳にしましたが、面白い作品。
こういう近代的作品はノットの得意とするところで、水を得た魚のよう。
とはいえ、前半の2曲については、どこか演奏が「質」的に練り込まれていない印象もあって、おそらく、そこまでリハーサルに時間を割けなかったんじゃないかと、聴きながら感じました。
つまり、これら2曲はあくまで前座のようなものであって、やはり、このコンサートのメインディッシュは後半、ラヴェルの歌劇「子どもと魔法」でした。
子どもと魔法
場面がつぎつぎに移り変わっていく、このオペラ。
そういう多彩な変化の場面でも、歌手たちの充実ぶりには、ほんとうに目を見張りました。
かなりユーモラスな表情までもとめられる作品ですが、どれもこれも見事に歌われていました。
ノットの指揮も、東京交響楽団の演奏もじつに色彩的で、目まぐるしいほどに色合いが変化していきます。
あまりにその変化のスピードが速いので、贅沢を言えばもう少しだけ、ひとつひとつの場面を丹念に描き切ってほしいというか、これでは「万華鏡」をのぞいているみたいだ、とも思ったりしました。
あとになって「ジョナサン・ノットがラヴェル《子どもと魔法》を語る」という記事を「ぶらあぼ」で読んで、すると、ノット自身が“ この音楽には、あらゆる種類の美しいものたちが、「万華鏡」のようにちりばめられているのです ”と。
なるほど、狙ってやっていたのなら仕方ないと笑ってしまいました。
♪小澤征爾さんがとりあげた際の録音。グラミー賞をとって話題になりました♪
マ・メール・ロワ
この作品は、どこか同じラヴェルの「マ・メール・ロワ」に通じるところがあるように感じます。
あのおとぎ話の音楽が終曲「妖精の園」で頂点を築き閉じられるように、この「子どもと魔法」も“ この子はいい子だ ”という母性の結晶のような美しい合唱によってクライマックスが築かれます。
この場面は、何度聴いても美しく心打たれると同時に、「マ・メール・ロワ」にはない、演奏上の難しさも感じます。
それは、時間的にとても短く、やや尻切れトンボのように終わる書き方がされている点です。
約45分のオペラで、ラヴェルはこのクライマックスに、わずか3分にも満たない時間しか与えませんでした。
「妖精の園」が4分弱をかけて、1つのゆるやかで大きなクレッシェンドを描いていくのに対して、「子どもと魔法」のフィナーレは、基本p(ピアノ)のアンダンテの歌が紡がれ、最後は子どもの“ ママ ”という言葉で静かに閉じられます。
ジョナサン・ノットも、大変ここに心を砕いていて、最後の合唱を、とってもとっても大切にあつかっていました。
その慈愛に満ちた音楽に心を打たれると同時に、それでもやはり、クライマックスを描ききれたとは言いきれないようにも、私は感じました。
きっと、ジョナサン・ノット自身も同じように感じたのではないでしょうか。
これは、本当にむずかしいオペラです。
♪「マ・メール・ロワ」と「子どもと魔法」をカプリングしたプレヴィンの録音♪
( Apple Music ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)
素敵な上演
それでも、これはほんとうに素敵な上演であって、昨年の「ばらの騎士」や、ずっと前の「フィガロ」に次ぐ、印象深い公演になりました。
私のなかでは、少なくとも「サロメ」や「エレクトラ」より、ずっと素晴らしい出来栄えに感じられました。
シュトラウスのオペラでは満席状態だった会場が、この「子どもと魔法」では1階席のサイドがほとんどガラガラ。
これほどのものが上演されているのに、そこは、何とも残念な思いがしました。
それにしても、日本人歌手の水準の向上は驚くばかりです。
各オーケストラが演奏会形式オペラの上演に積極的になっているのも、うれしい限り。
うっかりしていましたが、以下が素晴らしかった声楽の方たちの配役です。
子ども :小泉詠子
お母さん・中国茶碗・とんぼ :加納悦子
肘掛椅子・木 :加藤宏隆
柱時計・雄猫 :近藤圭
安楽椅子・羊飼いの娘・ふくろう・こうもり :鵜木絵里
火・お姫様・夜鳴き鶯 :三宅理恵
羊飼いの少年・牝猫・りす :金子美香
ティーポット・小さな老人・雨蛙 :糸賀修平
合唱:二期会合唱団
合唱指揮・指導:キハラ良尚
今回でノット&東響の演奏会形式オペラ・シリーズはおしまい。
ノット自身は来シーズンからバルセロナのリセウ大劇場の監督になるわけで、こうした高水準のオペラ上演がつぎつぎとなされていくのかと思うと、リセウはこれから凄い時代をむかえるのかもしれません。

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