シリーズ〈小澤征爾さんで音楽史〉

小澤征爾さんで出会う大作曲家50人(第5回)オッフェンバックからラヴェル

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日本のクラシック音楽をけん引した「世界のオザワ」こと、指揮者の小澤征爾(おざわ・せいじ、1935-2024)さん。

このシリーズでは、小澤征爾さんの録音で50人の作曲家にふれながら、クラシック音楽の歴史を旅します。

 

この機会に「クラシック音楽を聴いてみよう」という方向け、クラシック入門シリーズです。

シリーズ一覧はこちらのページで確認できます。

 

21:ジャック・オッフェンバック(Jacques Offenbach, 1819-1880)

 

 

シャンゼリゼのモーツァルト

 

喜歌劇「天国と地獄」で有名な作曲家ジャック・オッフェンバック(Jacques Offenbach, 1819-1880)

フランスで大活躍した作曲家ですが、実は、生まれはドイツです。

 

最初、非常に優れた「チェロ奏者」として音楽のキャリアをスタート。

それも「チェロ界のフランツ・リスト」と呼ばれるほどのヴィルトゥオーゾだったようです。

 

やがて作曲にも手をひろげ、特に劇場音楽に才能を発揮。

オペレッタ、日本でいう「喜歌劇」というジャンルを確立するに至りました。

 

彼のオペレッタの人気はフランスを超えて広がり、同時代のヨハン・シュトラウスⅡ世(Johann Strauss II、1825-1899)スッペ(Franz von Suppè、1819-1895)がオペレッタを書く大きなきっかけになったと言われています。

 

オッフェンバックの、美しく、親しみやすい旋律を生み出す才能を、先輩作曲家ロッシーニ(Gioachino Rossini, 1792-1868)は“ シャンゼリゼのモーツァルト ”と讃えています。

 

小澤征爾さんで聴くオッフェンバック

 

パリの喜び

 

バレエ音楽「パリの喜び」は、オッフェンバックの様々な作品の旋律をつなげた編曲作品。

ラヴェルの最後の弟子であるマニュエル・ロザンタール(Manuel Rosenthal, 1904-2003)が編曲しました。

 

小澤征爾さんのこのアルバムは、あまり話題にならないほうの録音かもしれませんが、わたしはとても好きで、お気に入りの1枚です。

明朗快活な音楽作りと、気持ち良いほどテキパキとしたアンサンブルが、作品の愉しさを倍増させています。

 

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22:サン=サーンス(Charles Camille Saint-Saëns,  1835-1921)

 

 

フランス音楽を確立

 

「国民音楽協会」をつくるなど、“ フランス音楽 ”という独自の文化圏の確立に大きな功績を果たしたのが、サン=サーンス(Charles Camille Saint-Saëns,  1835-1921)です。

 

モーツァルト並みの神童で、若くしてフランスの大家でした。

作曲のみならず、オルガニスト、ピアニストとしても大活躍。

 

また、音楽だけでなく、語学、詩、天文学、生物学、数学、絵画などなど、あらゆる分野に若いころから才能を示した「天才」でした。

プライベートでは旅行が大好きで、その結果、「アルジェリア組曲」や「エジプト風」など、異国情緒のあるタイトルをもつ作品も残されています。

 

小澤征爾さんで聴くサン=サーンス

 

“ 白鳥 ”~「動物の謝肉祭」

 

サン=サーンスの作品でもっとも有名なものは、組曲「動物の謝肉祭」の“ 白鳥 ”でしょう。

 

現在では広く聴かれている作品ですが、他の作曲家の作品をパロディー化した部分も多くあり、実は、サン=サーンスの生前にはプライベートな空間で数回演奏されただけの秘曲だったりします。

サン=サーンスは、自身が亡くなるまで出版も禁じていました。

ただ、“ 白鳥 ”については、サン=サーンスの完全なオリジナル作品ということもあって、例外的に、生前から出版されていました。

 

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交響曲第3番「オルガン付き」

 

コンサートでもっとも頻繁に演奏されるサン=サーンス作品のひとつが、交響曲第3番「オルガン付き」です。

文字どおり、オーケストラにパイプオルガンが参加する壮麗な作品。

ここでは、そのフィナーレにあたる第2楽章の後半をお届けします。

 

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23:ガブリエル・フォーレ(Gabriel Fauré, 1845-1924)

 

 

フォーレ

 

“ フランス音楽 ”という世界を確立するのに大きく貢献したサン=サーンス(Charles Camille Saint-Saëns,  1835-1921)。

その弟子であり、自身も優れた教師としてパリ音楽院の院長までつとめたのがガブリエル・フォーレ(Gabriel Fauré, 1845-1924)です。

 

「私がこの世を去ったら、私の作品が語るものに耳を傾けてほしい。結局、それがすべてだった…」

亡くなる数日前に息子さんに、そう語ったと伝えられているフォーレ。

 

彼の音楽は、その言葉のとおり、人間の内面へ語りかけるような響きでみちています。

 

そんなフォーレの音楽性に適したジャンルは、渋みあふれる歌曲や室内楽の世界。

これらのジャンルに、数多くの珠玉の傑作を残しました。

 

小澤征爾さんで聴くフォーレ

 

パヴァーヌ

 

小澤征爾さんは、ボストン交響楽団とフォーレ作品だけをあつめた「フォーレ・アルバム」を制作しています。

 

 

このアルバムから、静かな美しさが胸にささる「パヴァーヌ op50」を。

静かな合唱をともなった、ノスタルジックで、深い余韻を残す音楽です。

 

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“ 楽園にて ”~「レクイエム」

 

フォーレの作品で、もっともコンサートホールで触れる機会の多い作品のひとつが、この「レクイエム」。

通常あるべき「怒りの日」を欠き、全体的になぐさめに満ちた、やさしい響きが支配的な、まったく独自のレクイエムになっています。

ここでは、終曲の“ 楽園にて ”を。

 

小澤征爾さんのこの録音は、小澤征爾さんのいろいろな録音のなかでも、特に出色のひとつだと思っています。

 

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24:クロード・ドビュッシー(Claude Achille Debussy , 1862-1918)

 

 

フランス音楽の金字塔

 

まったく独自の色彩感で、フランス音楽史に、ひときわ大きく輝く存在がクロード・ドビュッシー(Claude Achille Debussy , 1862-1918)です。

 

彼が友人たちとお菓子屋さんにいったとき、周りの友人たちが手ごろなお菓子をたくさん買い込むなかで、ひとりドビュッシーだけは、その店にあった一番高級なお菓子をひとつだけ買って店を出たそうです。

このエピソードが、ドビュッシーという作曲家の美質、至高のものへの執着を物語っていると思います。

 

規則にしばられない彼の方向性は、音楽院での学生時代からしばしば問題を引き起こしましたが、そうして確立された独自の世界は、以降の作曲家たちにたいへんな影響力をもつことになりました。

 

小澤征爾さんで聴くドビュッシー

 

選ばれた乙女

 

小澤征爾さんには、不思議なことにドビュッシーの録音がほぼ残っていません。

演奏会では取り上げていたので、たまたまということかもしれません。

ライヴ録音などが今後発掘されていくと思いますが、ここでは、現在聴ける小澤征爾さんのドビュッシー録音として、カンタータ「選ばれた乙女」をご紹介しておきます。

 

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恩師ミュンシュで聴くドビュッシー

 

とはいえ、「選ばれた乙女」は20分弱の長さ。

もうひとつ、小澤征爾さんの師匠でもある、フランスの巨匠シャルル・ミュンシュ(Charles Munch, 1891-1968)の指揮したドビュッシーもご紹介しておきます。

 

ドビュッシーの代表作である、交響詩「海」から終曲“ 海と風の対話 ”です。

この作品は、初版の楽譜の表紙に、葛飾北斎の富岳三十六景の「神奈川沖浪裏」がつかわれたことでも有名です。

ドビュッシー本人の希望だったと伝わっています。

 

若き小澤征爾さんがこの曲を指揮するのを見たミュンシュは、「もっと力を抜くんだ」とアドヴァイスしたそうです。

 

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25:モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel 、1875-1937)

 

 

フランス音楽、もうひとつの金字塔

 

ドビュッシー(Claude Achille Debussy , 1862-1918)より少しあと、フランス音楽史に登場した天才がモーリス・ラヴェル(Maurice Ravel 、1875-1937)です。

 

何といっても、あの「ボレロ」で有名な作曲家です。

【オーケストラ入門】ラヴェル:『ボレロ』~小さな試聴室〈名曲を名演奏で〉

 

ピアノ曲におおくの名作を残したいっぽうで、「オーケストラの魔術師」とよばれるほどオーケストラの扱いも卓越していたラヴェル。

ロシアの作曲家ムソルグスキーのピアノ曲「展覧会の絵」を、現在よく知られるオーケストラ用にアレンジしたのも、他ならぬラヴェルでした。

 

後年、タクシー事故などの不幸がかさなり、彼は脳に障害をおってしまいます。

あるとき、自身の作品である「亡き王女のためのパヴァーヌ」を聴き、「美しい曲だ。これはいったい誰が作ったの?」と尋ねたという悲しいエピソードも残されています。

 

小澤征爾さんで聴くラヴェル

 

亡き王女のためのパヴァーヌ

 

小澤征爾さんはラヴェルを得意にしていて、ドビュッシーとは対照的なくらい、いろいろな録音が残されています。

まずは、さきほのエピソードでもご紹介した「亡き王女のためのパヴァーヌ」をお届けします。

美しいホルンのソロに始まります。

 

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「ダフニスとクロエ」

 

本当は「ボレロ」を紹介するべきところですが、「小澤征爾さんのラヴェル」のなかで、特に印象深く感じられるバレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲版の録音をご紹介します。

1973年、小澤征爾さんがボストン交響楽団の音楽監督に就任した直後にレコーディングされたもの。

 

爽やかな音のきらめき、小澤征爾さんの明晰な音楽作りが最良の形で出ている録音だと思います。

いちおうクライマックスの“ 全員の踊り ”をリンクしておきますが、全曲通して聴くと、いっそうこの録音の素晴らしさがわかると思います。

これも、小澤征爾さんのさまざまなレコーディングのなかで出色のひとつだと感じています。

 

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