シリーズ〈音楽の処方箋〉

【クラシック音楽の音楽処方箋】忙しくても心がうるおう。YouTubeで聴ける3分の歌5選

 

ちいさな音楽処方箋、今回は「忙しくても心をうるおしてくれる3分で聴ける歌」というテーマでお送りします。

こうしたYouTube動画というのは、公開が突然おわってしまうものも多いので、このブログでは、できるだけ公式な配信、著作権の問題をクリアしているであろうものから選んでいます。
とはいえ、是非、観れるうちに聴いてみてください。

レハール:“唇はだまっていても”~『メリー・ウィドウ』

オーストリア=ハンガリー帝国に生まれたフランツ・レハール(1870-1948)の代表作『メリー・ウィドウ』は1905年の作品。

オペレッタの内容は、いわゆるドタバタの恋愛コメディーといっていいもの。
そのわかりやすい筋書きに、レハールの甘い旋律が見事にからんだ大傑作です。

あの大作曲家のマーラーもこのオペレッタが大好きだったそうです。
でも、周囲にそれを知られたくなかったのか、助手に楽譜をこっそり買いに行かせたというエピソードが残っています。

この“ 唇はだまっていても” は、特に有名なナンバーのひとつで、ふたりがワルツを踊りながら愛を語り合う場面のもの。

夢のような3分間。

 

ゲーマンス:『わが街アムステルダム』

上でご紹介したものは、オランダの運河で行われるプリンセングラハト・コンサートのもの。

このオランダの運河で行われるコンサート・シリーズについては以前別の記事に書きましたが、特にその最終日に行われるコンサートが素敵で、会場に集まったお客さんたち、運河の上に船で集まったお客さんたちがステージ上の音楽家たちと一緒に大合唱をします。

何度観ても感動的な光景。
歌われるのは、『わが街アムステルダム』という歌。

私にとって、音楽のひとつの理想の姿がここにあります。

3分ほどの歌ですが、アンコールで2回歌っているので、動画そのものは6分弱です。

 

プッチーニ:“誰も寝てはならぬ”
(T:ルチアーノ・パヴァロッティ)

1994年に行われたロサンゼルスでの「3大テノール・コンサート」の映像。

「3大テノール」というのは、スペイン人のプラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラス、そして、イタリア人のルチアーノ・パヴァロッティのこと。
この3人がそろって舞台に立つ、大きなイベントだったのが、この「3大テノール・コンサート」です。

この3人のなかでパヴァロッティは、すでに亡くなってしまいました。

彼の代名詞だったのが、プッチーニの歌劇『トゥーランドット』からの“誰も寝てはならぬ”。

まるで、彼のために書かれたかのようにすら感じさせるものは何なんでしょう。
理屈を超えた説得力、論理だけではどうにも到達できない世界があることを教えられます。

 

シューベルト:アヴェ・マリア
(T:ルチアーノ・パヴァロッティ)

同じ3大テノールコンサートから、パヴァロッティが歌うシューベルトの『アヴェ・マリア』を。

シューベルトのこの歌は、女性の歌手による素晴らしい録音がたくさんありますが、どういうわけか、私はパヴァロッティが歌ったものが特に好きです。

正規にスタジオでレコーディングされた録音( Apple MusicAmazon MusicSpotifyLine Music などで聴けます)もありますが、私がどうしても聴きたくなるのはこの1994年のライヴでのもの。

何度も繰り返し聴いては、慰められたり、勇気づけられている歌唱です。

 

パリー(エルガー編曲):エルサレム

イギリスには、『ヘンリー・ウッド・プロムナード・コンサート』という音楽祭があります。

その最終夜、ラストナイト・コンサートのアンコールで、エルガーの『威風堂々』などと同じく、必ず歌われる恒例の歌のひとつがパリー作曲(エルガー編曲)の『エルサレム』です。

 

プロムスのラストナイト・コンサートは、ご覧になると驚くくらいのお祭り騒ぎ。
でも、どんなにお祭り騒ぎで賑やかな夜でも、最後の最後に、こうした真摯に訴えかける歌、近代社会批判を多分に含んだ歌詞の歌をみんなで合唱するという、その精神の高さ、志の高さにいつも胸をうたれます。

ここで演奏しているのは、アンドリュー・デイヴィス指揮BBC交響楽団。
アンドリュー・デイヴィスは、このラストナイト・コンサートを長年指揮していた、イギリス音楽界を代表する指揮者です。

この歌は音楽もすばらしいですが、ご紹介したとおり、イギリスの詩人ウィリアム・ブレイクの歌詞もたいへん素晴らしいので、ここではその原詩と私なりの訳をあてておきます。

 

And did those feet in ancient time,
Walk upon England’s mountains green:
And was the holy Lamb of God,
On England’s pleasant pastures seen!
むかし
イングランドの緑あふれる山を
神様が歩いていたの?
神様の聖なる子羊が
イングランドの美しい草地に見られたの?

And did the Countenance Divine,
Shine forth upon our clouded hills?
And was Jerusalem builded here,
Among these dark Satanic Mills?
神様のお顔が
雲に覆われた丘の上で輝いていたの?
ここにエルサレムが建っていたの?
こんな暗い悪魔の工場がひしめくところに

Bring me my Bow of burning gold:
Bring me my Arrows of desire:
Bring me my Spear O clouds unfold:
Bring me my Chariot of fire!
私に
燃える金の弓を、
強い望みの矢を、
雲をひきさく槍を、
炎の戦車を!

I will not cease from Mental Fight,
Nor shall my Sword sleep in my hand,
私は精神の闘いをやめない
剣を手のなかで眠らせることもしない

Till we have built Jerusalem,
In England’s green and pleasant Land.
イングランドの緑なす美しい大地に
エルサレムを建てるまで

 

 

 

どの歌もほんとうに素敵なものばかりです。
というわけで、「忙しくても心がうるおう。YouTubeで3分で聴けるクラシックの歌5選」というテーマでお届けしました。

たった3分で、これだけの世界を創造できる作曲家たちの凄さも感じます。

クラシックには短い音楽もたくさんありますので、そういった音楽もこれからお届けしていきます。

 

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