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【週刊MASSE】バーバラ・ボニー再発見

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2026/09/26

週刊MASSE:9月3号

バーバラ・ボニー再発見

先日、風邪で数日ダウンしたときに、むしょうに歌曲が聴きたくなりました。

いろいろ聴いたなかで、特に、アメリカの名歌手バーバラ・ボニー(Barbara Bonney、1956 – )の歌声におおきく慰められました。

 

彼女について、私が最初につよく印象付けられたのは、その声よりもまず、ある音楽雑誌のインタビューでした。

「リッカルド・ムーティの指揮では歌いたくありません。彼はオペラを交響曲のようにあつかってしまいます」、

そんな趣旨の批判をストレートに口にしていました。

 

指揮者を名指しで批判する、その歯に衣着せぬ物言いに、ずいぶん強い歌手なんだなと驚いたことをおぼえています。

私はムーティが大好きなので、そのせいでしばらく素直に彼女の声を聴くことができませんでした。

 

もちろん、そんなことは今は昔。

しばらくしてバーバラ・ボニー自身、ムーティと普通に共演していましたし、私もそういう無意味なこだわりは忘れてしまいました。

 

彼女のアルバムは、それこそ山のようにあるので、ここではまず最初の1枚として、彼女のオムニバス盤をご紹介します。

『清澄な歌声ーバーバラ・ボニー』 The Radiant Voice of Barbara Bonney

( Apple Music ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)

 

「清澄」=せいちょう と読むそうで勉強になります。

これはボニーのいろいろな録音からの聴きどころをまとめたベスト盤。

いわば寄せ集めなわけですが、これがどうして、なかなか優れたオムニバス盤になっています。

 

アルバム冒頭がルネサンス期のジョン・ダウランド( John Dowland、1563 – 1626)の歌、おしまいが現代のアンドレ・プレヴィン(André Previn、1929 – 2019)の歌。

バーバラ・ボニーのレパートリーの広さにおどろきますが、それを上手に活用して、ざっと500年くらいの時代の歌=歌の音楽史を俯瞰できる構成になっています。

 

歌曲だけでなく、オペラもモーツァルト、ドニゼッティとあり、さらには、グリーグの劇音楽「ペール・ギュント」のソルヴェイグの歌なども入っています。

作品はかならずしも年代順になっているわけではなく、むしろ、作品どうしがうまく調和するよう、それぞれのあと味を邪魔しないように配列されていて、このアルバムが真剣に選曲され、配列されたことをうかがわせます。

ドニゼッティの「愛の妙薬」の華やかな重唱がおわったあとにシューマンの「リーダークライス Op39」が静かにはじまるときや、R・シュトラウスの「Morgen」が静かな余韻に消えていったあとに、おなじくR・シュトラウスの「ばらの騎士」の輝かしいオーケストラのトゥッティがなりひびく瞬間などは、何度聴いても、その秀逸な配列にため息がでるほどです。

よくぞ、この接続を思いついたものだと感心してしまいます。

※Morgenのあとの「ばらの騎士」は最初、その音量差に心臓がとまるかと思うほどびっくりもしたので、くれぐれもご注意ください。

 

あまり耳にする機会のないシベリウスの歌曲やプレヴィンの歌曲の美しさなど、このオムニバス盤に教えられましたし、なかでも、「オペラ座の怪人」などのミュージカル作曲家として私は認識していたアンドリュー・ロイド・ウェバーの「レクイエム」の“ ピエ・イエズ ”はひとつの驚きでした。

このあと、期待して「レクイエム」の全曲を聴いてみたのですが、私が突出して美しいと感じたのは“ ピエ・イエズ ”だけでした。

 

バーバラ・ボニーは現在70歳。

もう表舞台から去っており、後進の育成に力をそそがれているそうです。

その歌声を聴けば聴くほど、ステージ上で、生で聴いてみたかった声です。

歌手の音楽家生命というのは、ほかの音楽家よりも短いことが多く、そのときそのときの美しさを体験することの大切さをあらためて感じます。

と同時に、こうして録音にその美声が刻まれていることの幸運もまた、かみしめなければいけないのかもしれません。

 

先に書いた通り、バーバラ・ボニーのアルバムは秀逸なものが非常に多いので、初心者の方は、まず今回ご紹介したオムニバス盤から入って、そのなかで気に入る歌と出会ったら、それぞれのオリジナルのアルバムに進む、という方法でたのしみを広げていくのをお薦めします。

 

青木尚佳さんのバッハ無伴奏リサイタル

2027年3月、紀尾井ホールで青木尚佳さんのリサイタルがあります。

プログラムはバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ全曲。

青木尚佳さんは、現在、ドイツの名門ミュンヘン・フィルのコンサートマスターをつとめているヴァイオリニスト。

わたしが初めて彼女の実演を聴いて、その音楽、その音に圧倒されたのも紀尾井ホール。

あの響きの良いホールに、青木尚佳さんのバッハが響くとなると、これはたいへんな聴きものになるかもしれません。

➡2022年公演レビュー:ミュンヘン・フィルのコンサート・ミストレス青木尚佳さんを聴いて~紀尾井ホール室内管弦楽団コンサート

ただ、バッハ全曲となるとたいへんな長さ。

14:00開演で17:30終演予定の長時間のリサイタルです。

弾く方もたいへんですが、聴く方もそれなりに体力を要求されますので、心と体の準備を。

◎名手による、最上級のバッハを体験できる公演。
ただし、聴き手も体力勝負。
◎初心者向け度:★★★☆☆

 

 

ヴィクトリア・ムローヴァが11月に来日します

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集を完成させた名ヴァイオリニスト、ヴィクトリア・ムローヴァがやってきます。

ヴィクトリア・ムローヴァは旧ソ連出身、1982年チャイコフスキー・コンクールで優勝、翌年に亡命し、以後、世界の最前線で活躍している名ヴァイオリニスト。

アンネ・ゾフィー・ムターとならび、ヴァイオリン界の女王といって間違いないと思います。

以前にバッハの無伴奏リサイタルを実演で聴きましたが、技術的にほかの名ヴァイオリニストたちより一段高い完成度を感じさせるうえに、音楽的に非常に知性派で、まさに別格のヴァイオリニストと思い知らされました。

東京、神奈川、大阪の3都市にわけて、ベートーヴェンの全曲を演奏するという、ちょっと変わったチクルスになっています。

また、11/14(土)広島では、名匠ユベール・スダーン(指揮)広島交響楽団をバックに、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が演奏されます。

まさに、オール・ベートーヴェンの来日公演です。

◎ヴァイオリンの女王による、高度に磨かれたベートーヴェンを体験できる機会。
◎初心者向け度:★★★☆☆

 

 

コバケンとその仲間たちオーケストラの「第九」2026

2022年なので、もう4年前のことになるのですが、「コバケンとその仲間たちオーケストラ 史上最高の第九に挑む」の公演レビューを書きました。

➡あれ?フルート奏者の譜面台に楽譜がない…あ、指揮者が指揮台から落ちる【史上最高の第九に挑む2022レポート】

今年2026年もこの名物コンサートがサントリーホールで開催されます。

御年86歳の指揮者の小林研一郎さんのもとに、「全ての人々が与えられた命を輝いて活きることができる社会づくりを目的として」、プロ、アマ問わず集まって構成されるオーケストラが「コバケンとその仲間たちオーケストラ」。

やや閉塞感のある昨今のクラシックコンサートにおいて、正攻法であるのに、まったく独自の存在感をはなっているコンサートです。

こういう「第九」は世界広しといえど、ここでしか体験のできません。

◎年末恒例の「第九」公演のなかでも、屈指の存在感をほこる公演。
◎初心者向け度:★★★★★

 

私が聴いた翌年、2023年公演はレコーディングされています。

( Apple Music ・ Amazon Music ・ Spotify ・ Line Music などで聴けます)

 

 

ウィーン・リング・アンサンブル、2027年もやってきます

今年2026年のはじめにレビューをお届けした、ウィーン・リング・アンサンブルが来年もやってきます。

➡想定外 ウィーン・リング・アンサンブル 2026年来日公演レビュー

ウィーン・リング・アンサンブルは、ウィーン・フィルのメンバーを中核に、ウィンナ・ワルツを腕利きの演奏家たちで届けてくれる、きわめて高水準の9人の名手たちによるアンサンブルです。

前回で初代リーダーのキュッヒル氏が退団。

今回から、あたらしい時代のウィーン・リング・アンサンブルがスタートします。

シュトラウスファミリー、ウィンナ・ワルツを愛するひとに太鼓判でおすすめしたい公演です。

◎名手たちによる、最上のウィンナ・ワルツが聴ける公演
◎初心者向け度:★★★★★

 

イギリスの名歌手ボストリッジの歌曲リサイタル

イギリス出身、オックスフォード大卒という知性派で、歌曲の分野であらたな境地を開拓してきた名歌手イアン・ボストリッジが2027年来日します。

若々しいひとですが、来日のころにはもう62歳。

年齢的に全盛期とは言えないでしょうが、いま現在の歌声はどのようになっているのでしょうか。

いずれにしても、ほかに代えることのできない世界観をもつ名歌手。

一聴の価値があることは間違いありません。

じっくりと“ 歌曲 ”に向き合いたい方にお薦めのリサイタルです。

◎ほかに求めることはできない、独自の美の世界をきずいた名歌手によるリサイタル。
◎初心者向け度:★★★☆☆

 

MASSE(まっせ)

クラシック音楽を長く聴き続けています。コンサートにも足を運び、良かった演奏も、期待外れだった演奏も、自分の耳で聴いて感じたことを大切に書いています。「自分なら本当に聴きたいか」を基準におすすめ公演やレビューを発信しています。クラシック音楽ブログArtoneMagアートーンマグは2021年5月スタート、2023年4月に月間86,000pv到達。感想など「お問い合わせ」ページから送ってください。

 

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