私の地元では例年毎夏、花火大会が行われ、私はそれが大好きです。
みんながひとつの美しいものを眺めて、それに声をあげて喜んだり、圧倒されて感嘆したり。
蝶の形になる花火がうち上がると、会場の色々なところから「ちょーちょ!」と子どもたちの喜ぶ声が聞こえて。
人が何か美しいものに出会っている瞬間、それを共有できることが私の花火大会のいちばんのたのしみです。
オランダのプリンセングラハト・コンサート
オランダは運河の街。
それを象徴するようなコンサートが8月に行われるグラハトコンサートのシリーズで、期間中、街中が音楽で溢れます。
少し調べてみて驚いたのが、ほとんどのコンサートが「無料」、チケットもほとんどないらしいということ。
コンサートには様々なアーティストが招かれ、ピアノからオーケストラまで年によって様々な編成のコンサートが多彩に開催されているようです。
今回ご紹介したいのは最終日のプリンセングラハト・コンサート、しかも、そのアンコールです。
ご覧いただくとわかるのですが、運河の上に人々が船で集まってコンサートを聴いています。
それは本当に絵のような風景。
一枚の絵画のような光景が画面いっぱいに広がります。
これを観ると、オランダにゴッホが生まれるのは当然なんだと納得してしまいます。
みんなが自然に口ずさめる歌があるということ
ウィーンの人々には『美しき青きドナウ』(J・シュトラウス)、チェコの人々には『モルダウ』(スメタナ)、フィンランドの人々には『フィンランディア』(シベリウス)、アメリカの人々には『星条旗よ永遠なれ』(スーザ)、そしてイギリスの人々には『威風堂々第1番』(エルガー)などなど…。
“自分たちのクラシック音楽”があるというのは、クラシック音楽を聴き始めると、うやらましくなるところです。
日本にも、素晴らしいクラシック音楽の作品はありますが、それでも、まだ「自分たちの音楽」と呼べるほど根差した音楽は登場していないように思います。
その代わりというか、音楽に限らなければ、日本人にとっては”富士山”がそうした存在でしょうか。
例えば、ヨーロッパには何といっても大きな「アルプス山脈」がありますが、スイスの人々はあれを”自分たちの山”と思うかというと、実はそうでもないという話を聞いたことがあります。
どちらかというと、あれは”ヨーロッパの”山という感覚になるそうで、そういう意味では、日本人に”自分たちの山”があることは、海外の登山家たちにはうやらましいと思われているのかもしれません。
とはいえ、音楽好きからすると、日本にも“自分たちの音楽”があったらなと、ないものねだりをしたくなりますが。
わが街アムステルダム
ヨーロッパに多い、お祭りをかねたようなコンサートには、たいていおしまいに「定番曲」があります。
このプリンセングラハト・コンサートでは、最後に必ず『わが街アムステルダム』が歌われます。
“アムステルダム人になることほど幸せなことはない”という、アムステルダムを運河を通して讃えている歌です。
このコンサートでは、それをステージ上のミュージシャンだけでなく、そこに集まった聴衆、みんなで大合唱します。
これは厳密にいえば、クラシックというジャンルに入らない歌なんでしょうが、とても素敵な光景なのと、歌そのものも実に素晴らしい3拍子に満ちているので、このブログでご紹介せずにはいられませんでした。
老若男女問わず、みんなが声をあわせられる歌があるというのは本当にうつくしいことです。
是非、YouTube上で正式に公開されている動画でその様子を楽しんでください。
ステージ上でヴァイオリンを弾いているのはリサ・バティアシュヴィリ、オーボエを奏でているのはフランソワ・ルルーで、ふたりは夫婦でもあります。
この運河コンサートのシリーズでは、こうした世界の一流演奏家も登場します。
名歌手アメリングも歌っていた
この『わが街アムステルダム』という歌、とっても素敵な歌なので、ほかに何か音源がないかと思っていたところ、なんとオランダの名歌手エリー・アメリングが録音しているものを見つけました。
( AppleMusic↓ ・ Amazon Music ・ Spotify ・ LineMusic )
これは知る人ぞ知るというか、オランダのジャズ・ピアニスト、ルイス・ヴァン・ダイクという方が伴奏しているので、ジャズ・ファンはよく知っている録音なんだそうです。
クラシック音楽を中心に聴く側からすると、アメリングがこういうアルバムを録音しているのが意外でした。
クラシックの音楽家が他ジャンルのアルバムを出すことはそれほど珍しくないのですが、正直、あまり良い出来のものは見かけません。
このアルバムもあまり期待せずに聴いてみたのですが、これがとんでもない。
おどろくほど素敵な歌の連続でした。
しっとりとした、それでいて、きらめくような美しいアルバムです。
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