(追記)文章中、オープニング・ファンファーレの日程を4/22と誤記しておりました。ただしくは7/22です。おわびとともに訂正させていただきます。教えてくださった方、ありがとうございます!
神奈川県の川崎市にあるミューザ川崎シンフォニーホールを中心に開催される「フェスタ・サマー・ミューザ」。
2023年も7月から8月にかけて、国内オーケストラ公演を中心に数多くのコンサートが連日開催されます。
コンサートの質が高く、さらにチケットの値段が良心的で、お薦めのクラシック音楽祭です。
先日、そのラインナップが発表されましたので、特にお薦めのコンサートを選んでみました。
Contents
サマーミューザを簡単にご紹介
JR川崎駅から直結している「ミューザ川崎シンフォニーホール」を中心に開催される音楽祭が「フェスタ・サマー・ミューザ」です。
毎年7月から8月にかけて、国内オーケストラの公演を中心に数多くのコンサートが連日開催されます。
今年は7月22日(土)にはじまり、 8月11日(金祝)まで開催されます。
お薦めの理由は、①コンサートの質が高いこと、②チケット価格が抑えられていること、③会場となるホールの音響が素晴らしい、④夜の公演だけでなく、昼の公演も多い、などの点です。
チケットの値段については去年より少し上がっていますが、それでも、S席が5,000~6,000円、いちばん安い席は2,000~3,000円です。
しかも、25歳以下は半額の公演も多くあります。
また、首都圏の音楽祭というとラ・フォル・ジュルネ(特集ページ)があるものの、あちらはホールがクラシック向きではないという致命的な問題点があります。
ですが、こちらのメイン・ホールは「ミューザ川崎シンフォニーホール」ですから、どの席で聴いてもよい響きを体験できます。
そして、肝心の「コンサートの質が高い」という点については、こうしてブログで特集したくなるくらいです。
では、さっそく、ここからはお薦めのものをコンサート開催順にご紹介していきます!
早い者勝ち?開幕ファンファーレ
7/22(土)オープニング・コンサートの開場時間14時のすこし前
@ミューザ川崎 歓喜の広場
※当初4/22と誤記していました。申し訳ございません。
東京交響楽団の管打楽器アンサンブルによるファンファーレ
三澤慶(作曲)「音楽のまちのファンファーレ〜フェスタサマーミューザKAWASAKIに寄せて」
音楽祭の開幕を告げるのは、この音楽祭のオリジナルのファンファーレです。
ミューザ川崎シンフォニーホール入り口まえの「歓喜の広場」にて、東京交響楽団のブラス・セクションが演奏します。
ファンファーレですから、短い時間で終わってしまうセレモニーなのですが、これが実際にはたいへんな人気イベント。
というのも、この短いファンファーレを東京交響楽団の音楽監督であるジョナサン・ノット自らが登場して指揮を振るからです。
至近距離でジョナサン・ノットを観ることができ、しかも、このセレモニー自体は「無料」なので驚くほど混雑します。
ホームページには「入場制限をさせていただく場合があります」と書いてありますので、かならず観たいという方は早めに行くことをお薦めします。
また、今年も例年通りジョナサン・ノットが登場するのかどうか、特に記載がないようなので、ノットがお目当てという方は事前にホームページなどで確認をお願いします。
「オープニング・コンサートの開場時間前」に行うとありますので、14時のすこし前におこなわれるはずです。
ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」ノット&東響 Amazon
ジョナサン・ノット(指揮)東京交響楽団による「オープニング・コンサート」
7月22日(土) 15:00@ミューザ川崎
(14:20-14:40プレトーク)
(公演詳細ページ)
チャイコフスキー:交響曲第3番 ニ長調 Op. 29 「ポーランド」
チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調 Op. 36
お薦めPOINT♪
初日にして、これが大本命。
ジョナサン・ノット指揮する東京交響楽団のコンサートです。
ジョナサン・ノットはイギリスの指揮者。
現在、この東京交響楽団の音楽監督をつとめていて、この楽団に黄金時代をもたらしています。
日本でオーケストラ公演を聴くなら、まずいちばんに聴くべきはこのコンビだと思います。
例年、かなり凝ったプログラムが組まれるオープニング・コンサートですが、今年は直球勝負で、チャイコフスキーの交響曲が2つ並べられました。
前半の交響曲第3番ニ長調は、フィナーレにポロネーズのリズムが用いられているため『ポーランド』のニックネームを持つ交響曲です。
チャイコフスキーの全6曲の交響曲のなかでは、比較的演奏される頻度の低い作品ですが、あのバレエ音楽「白鳥の湖」が書かれている時期の作品でもあって、決して親しみにくい作品ではありません。
それどころか、随所にバレエ音楽のエコーが響いている作品で、旋律線やリズムがとてもうつくしい作品です。
後半に演奏される交響曲第4番は、チャイコフスキーの後期3大交響曲のはじまりを告げた、傑作中の傑作。
「暗から明へ」という劇的な構成をとっていて、ピチカートが大活躍するユニークな第3楽章のあとには、熱狂的なフィナーレが置かれています。
ジョナサン・ノットが東京交響楽団とチャイコフスキーを演奏するのは、今回が初めて。
ジョナサン・ノットがチャイコフスキーを振るなら、第1番から第4番をまず聴いてみたいと思っていたので、このプログラムはうれしい限りです。
オーケストラ、指揮者、曲目、すべての点でお薦めです。
高関健(指揮)東京シティ・フィルハーモニック
7月26日(水) 15:00@ミューザ川崎
(14:20-14:40プレトーク)
(公演詳細ページ)
ガーシュウィン:パリのアメリカ人
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー
(piano)横山幸雄
バーンスタイン:『ウエスト・サイド物語』~「シンフォニック・ダンス」
バーンスタイン:ディヴェルティメント
お薦めPOINT♪
川崎は「ジャズ」の街という側面もあって、この音楽祭でもジャズはひとつの大切な要素になっています。
誠実な演奏が心地よい東京シティ・フィルハーモニックは、「アメリカ音楽」にフィーチャーしたプログラムを組んでいます。
前半は、クラシックとジャズの融合をおこなったガーシュウィン(George Gershwin、1898-1937)の傑作が2曲並べられています。
映画にもなった「パリのアメリカ人」、漫画「のだめカンタービレ」のドラマ版が放送されたときにエンディングテーマにもなっていた名曲「ラプソディー・イン・ブルー」。
「ラプソディー・イン・ブルー」のピアノソロが、日本を代表するピアニストのひとり、横山幸雄さんというのも豪華です。
後半は、ミュージカル「ウエストサイド・ストーリー」の作曲者であり、指揮者としても大活躍したレナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein、1918-1990)の代表作が2つ選ばれています。
真摯な指揮をされる高関健さんは、若いころにバーンスタインに師事している方なので、思入れも強いであろう作品。
高関健&東京シティ・フィルという、誠実なコンビに期待のコンサートです。
「クラシックだけでなく、ジャズも好き」という方に特にお薦めの公演。
大野和士(指揮)東京都交響楽団
7月28日(金) 19:00@ミューザ川崎
(18:20-18:40プレトーク)
(公演詳細ページ)
ニールセン:狂詩曲風序曲『フェロー諸島への幻想旅行』
グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調
(piano)久末 航
シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 Op. 43
お薦めPOINT♪
日本を代表する指揮者のひとり、大野和士さんがサマーミューザに登場するのは、実に8年ぶりとのことです。
大野さんが現在音楽監督を務めている東京都交響楽団(ややこしいですが、冒頭にご紹介した東京交響楽団とは別のオーケストラです)とのコンビで登場です。
メインには、北欧の大作曲家シベリウス(Jean Sibelius、1865-1957)の代表作、交響曲第2番ニ長調が選ばれています。
ロマン派交響曲の傑作のひとつで、北欧の抒情性にあふれる出だしから、やがては、フィナーレ第4楽章の勇壮で雄大な音楽へとなだれ込んでいきます。
大野和士さんが振るシベリウスの2番を聴いてみたいという方にお薦めの公演。
鈴木秀美(指揮)山形交響楽団
7月30日(日) 15:00
(14:20-14:40プレトーク)
(公演詳細ページ)
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
(Vn)石上真由子
シューベルト:交響曲第8番 ハ長調 D. 944『ザ・グレート』( ♫ 鑑賞ガイド )
お薦めPOINT♪
関東圏ではなかなか聴けないオーケストラが登場するのも、サマーミューザの例年のたのしみで、今年は山形交響楽団が登場します。
なんと2022年度におこなった定期演奏会のチケットが全公演完売だったということで、オーケストラの好調ぶりがうかがえます。
今回は、バロック音楽のパイオニアで、この楽団の首席客演指揮者でもある鈴木秀美さんが指揮者として登場。
ベートーヴェンとシューベルトという、まさに王道のプログラムでステージにあがります。
関東にいながら山形交響楽団を体験できる貴重な機会になります。
セバスティアン・ヴァイグレ(指揮)読売日本交響楽団
8月1日(火) 19:00@ミューザ川崎
(18:20-18:40プレトーク)
(公演詳細ページ)
ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調( ♫ 鑑賞ガイド )
ワーグナー(デ・フリーヘル編曲):
『ニーベルングの指環』オーケストラル・アドヴェンチャー
お薦めPOINT♪
読売日本交響楽団は、常任指揮者であるセバスティアン・ヴァイグレとともに登場。
彼がサマーミューザに登場するのは、初めてのことだそうです。
メインは、ワーグナー(デ・フリーヘル編曲):『ニーベルングの指環』オーケストラル・アドヴェンチャー。
リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner, 1813-1883)が作曲した、上演に4日間が必要となる大作オペラ「ニーベルングの指輪」から、管弦楽の活躍する音楽を中心につないで、約1時間の音楽に凝縮した作品。
近年、演奏される頻度が高くなってきている作品です。
歌劇場でキャリアを積み重ねてきたドイツ人指揮者ヴァイグレの本領発揮を期待したい公演です。
広上淳一(指揮)東京交響楽団
8月5日(土) 17:00@昭和音楽大学テアトロ・ジーリオ・ショウワ
(公演詳細ページ)
ドリーブ:バレエ組曲『コッペリア』
ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調 Op. 27
お薦めPOINT♪
サマーミューザは出張公演というのがあって、こちらのコンサートは同じ川崎でも、小田急線の新百合ヶ丘駅から徒歩5分ほどの「昭和音楽大学テアトロ・ジーリオ・ショウワ」というホールで行われます。
指揮は、日本を代表する指揮者のひとり、広上淳一さんです。
前半にドリーブのバレエ音楽「コッペリア」の組曲が選ばれているのが素晴らしいところ。
このバレエの名曲は、有名なわりにコンサートではあまり演奏されないので、好調の東京交響楽団との演奏が聴けるのはうれしいところです。
後半は、今年が記念年であるセルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov, 1873-1943)の代表作、交響曲第2番が選ばれています。
ラフマニノフの代表作であるピアノ協奏曲第2番とならんで、非常に旋律がうつくしい傑作で、私も大好きです。
ただ、どちらかというと秋冬に聴いて美しさを感じる音楽の印象がある曲なので、8月の真夏にどう響くのか、ちょっと不安はあります。
そこはベテランの広上さんと、好調の東京交響楽団の腕の見せ所でしょうか。
広上淳一さんが京都市交響楽団とラフマニノフをやったときのライヴ盤 Amazon
井上道義(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団
8月6日(日) 16:00@ミューザ川崎
(15:00-15:30プレコンサート)
(公演詳細ページ)
ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 「田園」 ( ♫ 鑑賞ガイド )
ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 ( ♫ 鑑賞ガイド )
お薦めPOINT♪
まさに「王道中の王道」といっていい、ベートーヴェンの「運命」&「田園」というプログラム。
これを、20224年末での引退を表明している井上道義さんが指揮するというのだから、聴きものです。
井上さんのことなので、ありきたりの演奏内容にはしないはずです。
新日本フィルハーモニーについては、去年から何度かコンサートに出かけていますが、上岡敏之さんが指揮する公演以外は、どれもアンサンブルが大味になっていて心配しています。
井上道義さんとのコンビで、充実のベートーヴェンを期待した公演です。
「クラシックと言ったらベートーヴェン!」という方にお薦めの公演。
カーチュン・ウォン(指揮)日本フィルハーモニー交響楽団
8月9日(水) 15:00開演
(14:20~14:40プレトーク)
(公演詳細ページ)
ヴェルディ:歌劇『運命の力』序曲
菅野祐悟:サクソフォン協奏曲『Mystic Forest』
(sax)須川展也
ムソルグスキー(ラヴェル編曲):組曲『展覧会の絵』
お薦めPOINT♪
今年の9月から、この日本フィルハーモニー交響楽団のあたらしい首席指揮者になるシンガポール出身のカーチュン・ウォンが登場します。
今年のはじめに、このコンビの公演を初めて聴きましたが、アンサンブルが信じられないほどフレッシュなものに刷新されていて、非常に驚きました。
楽団員の士気も非常に高まっているのが感じられて、このオーケストラは、今まさに新しい時代を迎えようと飛躍している途上にあります。
音色が色彩的なものに変わってきていたので、このコンビなら、今はフランスものを聴いてみたいと思っていたのですが、ここではフランスの大作曲家ラヴェル(Maurice Ravel 、1875-1937)が編曲した名曲、ムソルグスキー(Modest Mussorgsky, 1839-1881):組曲「展覧会の絵」がプログラムされています。
これ以上ないくらい、ぴったりの選曲だと思います。
前半には日本を代表するサックス奏者、須川展也さんが登場してサクソフォン協奏曲を吹くということで、変化のあるプログラミングになっているのもカーチュン・ウォンらしさが出ています。
名曲「展覧会の絵」が好きな方には特に聴き逃してほしくない公演。
新しい首席指揮者のもと、あたらしい風が吹いているオーケストラで、新鮮な音楽を聴くことができるはずです。
マーラー:交響曲第5番 カーチュン・ウォン&日本フィル Amazon
まとめ
いまや、日本には大小さまざまの「音楽祭」が数えきれないほどある時代ですが、そのなかでも、毎年そのクオリティの高さが光る音楽祭が、この「サマーミューザ」だと思います。
日本にはたくさんの海外のオーケストラもやってきて、特に今年の秋は、呼び過ぎではないかと思うくらい、世界中の名門オーケストラが一斉に日本公演を行います。
そうしたコンサートも当然お薦めですが、ただ、どうしても海外のオーケストラを聴くとなると、チケットは安い席でも1万円以上。
クラシックのコンサートというのは、一生忘れられないような感動をあたえてくれることがある反面、ハズレの公演も数多いのが実際のところで、それは、海外の一流の楽団であってもそうです。
ですので、クラシックコンサート初心者であればあるほど、まずは、手ごろな価格の国内オーケストラから体験してみていただきたいです。
日本のオーケストラが海外の楽団に一歩も二歩も劣るというのはひと昔前の話。
今では、例えば、ジョナサン・ノット&東京交響楽団のようなコンビになると、海外の一流オーケストラと肩を並べる演奏をすることが間々あります。
是非、サマーミューザで素晴らしい音楽体験をしてみてください。
♪お薦めのコンサートを「コンサートに行こう!お薦め演奏会」のページで月別にご紹介しています。
判断基準はあくまで主観で、これまでに実際に聴いた体験などを参考に選んでいます。
また、実際に聴きに行ったコンサートのなかから、特に印象深かったものについては、「コンサートレビュー♫私の音楽日記」でレビューをつづっています。
コンサート選びの参考になればうれしいです。